2017
07.01

新年

新年あけましておめでとうございます。2016-2017シーズンは昨シーズンとなりました。いよいよ2017-2018シーズン、オリンピックのシーズンがやってきます。怪我や病気なく、1人でも多くのスケーターが健康に1年を過ごせますように。そして、引退する選手が納得できる形で競技の場から去って行けますように。

オリンピックシーズンは毎試合見ている側も気が抜けません。試合後のふとしたインタビューでシーズン後の引退を発表しますので。12月から1月はそれがさらに現実味を帯びてきます。代表から落選した選手の背後には引退の2文字が浮かんでくるのです。GPS・GPF・ナショナル・オリンピック。これだけ出るとしても両手で数えられる回数しか滑ることはありません。1つ1つを噛み締めましょう。

初めてオリンピックを迎えるファンの方に使えるアドバイス!NHKのオリンピック中継では表彰式やニュースで演技が中断されることがあります。それでもって、まったく関係のない時間に放送されるケースがありますので、録画の保険をかけておいた方が懸命です。そのためにHDDを整理して容量を空けておきましょう。フル尺で再放送なんてしてくれません。一度ミスったら死ぬと思ってください!
2017
06.28

ジューンブライド・改

ジューンブライド。スケート界にも愛の旋風吹き荒れております。

*クセニア・モンコキリル・ハリャーヴィン

カップル解散後も交際を続けていた2人がゴールイン。モンコは現役時代よりも少しふっくらとして女性らしくなりました。

*イザベラ・トビアス

Rehearsal ✔️ My heart is so full ☺️💛 #IzziLitesUpTheFox

Isabella Tobias Litesさん(@mrslightsoutlites)がシェアした投稿 -



今週末挙式のイザベラ・トビアスはツイッターの名前とアカウント名をイザベラ・トビアス・ライツに変更。こちらの結婚式にはリンクメイトが複数出席している模様。

*ミハル・ブレジナダニエル・モンタルバーノ

こちらは交際歴長めの2人。2年前に婚約し、事前予告通りオリンピック前に結婚しました。

Ready for The Marriage Celebration! ❤ ------------------------------------------ #figureskatingfamily #wedding #friends #love #ceremony #figureskating

ʙᴇʟɢɪᴀɴ ᴏʟʏᴍᴘɪᴄ ғɪɢᴜʀᴇ sᴋᴀᴛᴇʀさん(@jorikhendrickx)がシェアした投稿 -


モンタルバーノさんがユダヤ人なので、そんな感じの結婚式。ドイツでのスケーター仲間多めの結婚式です。

*エリオット・ハルバーソン&モリー・オーバースター

Love is love is love ❤️❤️ #mollysignsherleis

Douglas Razzanoさん(@douglasrazzano)がシェアした投稿 -


全米選手権やジュニアグランプリで活躍した2人が結婚。同時代に現役だったりっぽんぽん、ジョンソン、ラザーノが挙式に出席。

*エリック・ラドフォードルイス・フェネロ

こちらは婚約。旅行先のスペインでラドフォードさんがプロポーズしました。答えはイエスだったそうな。カミングアウトが当たり前になったとはいえ、スケーター同士というのはあまりなかったです。ラドフォードさんはコーチを替え、フィアンセもいて、気持ちを新たにオリンピックの頂へと突き進むのですね。

追記
*小松原美里&ティモシー・コレト

さる1月23日、私小松原美里とティモシー・コレトは、入籍致しましたことをご報告させて頂きます。 兼ねてより、良きパートナーであり良き相談相手であった彼と二人で、益々協力し、同じ目標に向かえる事は、この上ない幸せです。 これまで以上に、選手として、また一人の人間として、優しいティムと一緒に更に成長していけるよう、努力を重ねて参ります。 これからもご指導、ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。 From the moment we met, we knew we had a special connection. We are happy and humbled to announce to you our marriage in January of this year. We love every moment together and can't wait for all that life has ahead of us. Thanks for continuing on alongside us and supporting us on this journey. みさと&ティム❤️

Tim Koletoさん(@timkoleto)がシェアした投稿 -

ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお見落としていました。まさか結婚とは!めでたい!めでたい&めでたい!日本のカップル競技で夫婦カップルなんて。これはますます応援しがいがあるってもんですよ。

*ロマン・アグノエル&ジャマル・オスマン

「この人とこの人付き合ってる」というのは、噂レベルで伝わってくるものなのですが、これは何も知らなかったパターン!アグノエルとオスマン。会う機会はたくさんあったでしょうけど、まさかの組み合わせでした。

*ブライス・デイヴィソン&ミシェル・ムーア

I am speechless..... what a magical day ✨💛 • #onemooredavison #wifey #bestdayever #kleinfeldcanada #daniellecaprese @kleinfeldcanada @hernderdotcom

Michele Davison (Moore)さん(@michele_davison)がシェアした投稿 -



http://www.onemooredavison.com/
15年来の知人でしたが、引退後から交際を始めたそうです。奥さんはナショナルレベルで試合に出場していました。12歳のときから奥さんが片想いしていたという、むず痒くなるエピソードが書いてありました。プロポーズは2015年で、そこでデイヴィソンが初めて「I love you」とい言葉を発したそうです。日本男児かな?結婚式のサイトに痒い写真がいっぱい掲載されているのでどうぞ。ベストマンはモスコビッチさんが努めました。

*タラ・リピンスキー

タラ・リピンスキーさんはタラ・カポスタシーさんになりました。旦那さんのトッド氏はSports Feature Producerという職業らしいです。謎職業。

みなさん末永くイチャイチャしてください。
2017
06.22

Top 50 performances of All time *1-15*

12シーズンのベストパフォーマンスもいよいよトップ15。
33位~50位 http://sthmytkh.blog108.fc2.com/blog-entry-3070.html
16位~32位 http://sthmytkh.blog108.fc2.com/blog-entry-3072.html

15.高橋成美&マーヴィン・トラン 2012年世界選手権LP:ケベックの協奏曲 プロトコル
SP:65.37(3位) LP:124.32(3位) 総合:189.69(3位)
ナポレオン・ボナパルトがロシアとの戦争に敗れてちょうど200年。ニースでの世界選手権では偶然とは思えない不運がチームロシアを襲いました。その最たるものがペアで、デススパイラルやフィニッシュでの転倒など、シーズンに一度あるかないかのミスを連発させました。バンクーバーオリンピック後の大量引退から2年経ち、今ではトップで活躍している選手もまだ力をつけている世代交代の過渡期でした。その混沌とした試合で高トラの2人は力を見せました。SP3位スタートで、LPは最終滑走。120.69を出せば表彰台に乗れる。ミスを最小限に留めれば出せるスコアでした。演技が始まり課題のソロジャンプ。3Sはステップアウトになったけれど、3T+2Tはなんとか着氷。後半のスロージャンプはスローサルコウが両足に。でもスロートゥループで立て直しました。これはいけると確信。そこからは世界最高の質だった美しいスプリット、移動距離、上げ下ろしのリフト。さらに強豪たちに見劣りしない巧みなトランジションでムード満点。点数がコールされ、リチャードに飛びつく成美の姿は今でも忘れられません。日本のフィギュアスケート史における金字塔です。

14.ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン 2016年世界選手権SD:ウォリスとエドワード プロトコル
SD:76.29(1位) FD:118.17(1位) 総合:194.46(1位)
このシーズンはパパダキスが脳震盪を起こした影響でグランプリシリーズを欠場。ヨーロッパ選手権から復帰しましたが、分かりやすくシゼロンが引っ張る形で、何とかミスなく演技を終えていたという感じでした。そしてこのSDです。体調回復への心配は杞憂でした。こんなに一蹴りで滑っていくことが可能なのかと理解が及ばないほどの伸びで、パターンダンスのグライドが他を圧倒していました。同じパターンを踏んでいるようには見えない深さで、パターンを抉るような滑らかさでした。シゼロンのスキルにパパダキスも見劣りせず、完全復活を印象付けました。他カップルとPCSが1点差ずつついてもいいと思えました。あまりに滑り過ぎて引くという経験はこれが初めてでした。

13.ジェイソン・ブラウン 2016年チームチャレンジカップLP:ピアノレッスン プロトコル
SP:87.72(4位) LP:181.50(2位) 総合:北米2位(SP) 北米2位(フリー種目)
腰痛で全米選手権を欠場し、アメリカ開催の世界選手権の選考漏れ。そしてこのチームチャレンジカップで氷の上に戻ってきました。4回転は入っておらず、3Aにもミスはありました。でも、こんなに儚さを演出できたプログラムは後にも先にもないと思います。ガラスのショーケースの中で踊る機械仕掛けの人形のよう。美しいのにどこか脆くて悲しげなんです。スパイラルでのフリーレッグの上げ下げまで神経が行き届いており、イロモノ的な柔軟性アピールに終始していません。あくまでもスパイラルはプログラムを構成するピースであり、プログラムをシームレスに繋ぐために必要不可欠なものなのです。ピアノレッスンは女子選手の間で使用されることが多いですが、これは男子選手のジャンプ力と筋力があってこそ成立させられます。怪我からの大復活という意味でもとても印象に残りました。

12.ウェンジン・スイ&ツォン・ハン 2016年世界選手権SP:Spanish Romance プロトコル
SP:80.85(1位) LP:143.62(2位) 総合:224.47(2位)
技術>>>芸術性というように、完全に技術に振り切れていた2人が、世界トップの芸術性を持つペアだと認識されるきっかけとなった演技。それまではスロージャンプやアクロバティックリフトで押し切る構成が非常に多かったです。クリエイティブなエレメンツも曲に合っているのかどうかとか、すごいけどGOEではプラスはつくのかそういったことが気になっていました。この演技では、スケーティングスキルが向上が目に見えました。それまでのようにスピードを出すためのクロスの連続が減ったので、大人の余裕が感じられるようになりました。フラメンコという大人らしいテーマも、ジュニア時代に滑っていたものとはわけが違います。今にも刺しかねない殺気で対峙しつつおこなわれるステップシークエンスには鳥肌。女性の技術向上、そして男性の筋力向上、それに伴って要求の高いローリー・ニコルの振付をこなせるようになった。この2人の時代の始まりを予感させました。

11.浅田真央 ソチオリンピックLP:ピアノ協奏曲第2番 プロトコル
SP:55.51(16位) LP:142.71(3位) 総合:198.22(6位)
僕はジャパンオープンで戸惑いました。「あれ・・・衣装が普通にかっこいいぞ」と。襦袢や胸周りの処理にいつもモヤッとしていた真央の衣装がかっこいいという異質なシーズンの始まりでした。途中で衣装を鐘の衣装にすることもありましたが、最終的にはラスボスに相応しいこの衣装に戻しました。オリンピックの金メダルだけを目指し、ジャンプの改良に着手し、成績としては振るわない2シーズンを挟みながらも、ここまでやってきた。でもSPで痛恨の転倒があり、表彰台争いからは大きく後退。まさかの第2グループの滑走となりました。臆することのない6種8トリプル構成。代名詞の3Aが決まり、エッジ矯正に苦労した3Lz、回転不足との戦いだったセカンドトリプル、回転のしすぎて不安定だった3Sなど、ジャンプを降りる度に彼女の頑張りが頭をよぎりました。スピン、ステップ、最後のスパイラルを終えて涙を浮かべた彼女に、こちらの涙も止まりませんでした。国民のほとんどが浅田真央の名前を知っていて、みんなが金メダル獲得を疑っていない。大会前の練習環境は恵まれたものではなかったし、メディアの報道は加熱する一方。常人では考えられない精神状態だったはずです。完璧な出来ではなかったけれど、幾多の荒波を乗り越えてきた浅田真央の全力を見せてもらいました。全スケートファンが引退後の彼女の幸せを願っていると思います。

10.ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ 2014年世界選手権FD:Maria de Buenos Aires プロトコル
SD:69.20(2位) FD:106.21(3位) 総合:175.41(2位)
メリチャリとテサモエが欠場し、ボブソロは直前に棄権。最低でも1組は新たなメダリスト誕生が確定していた大会です。最大の関心事は、引退を撤回したペシャブルが金メダルを獲れるかどうか。先に滑ったペシャブルが暫定1位、イリカツはSDの出遅れで猛追及ばず。その2組をカペラノが僅差でかわしました。そして最終滑走だったのがウィバポジェ。2人の最大の武器は2人の距離感。それがタンゴの足捌きと合致しました。男どもを誘惑するケイトリンの姿に釘付けになりました。言い方は悪いですが、最高に美しい尻軽という感じ。生活臭が香ってくる究極に俗っぽいアルゼンチンタンゴの世界でした。0.06差にあったカペラノとペシャブルの間に割って入り銀メダルを獲得。メダルの色の行方にはハラハラしきりでした。この大会では、オリンピック疲れの上に、東京から埼玉への移動がハード、休息も満足に取れない環境で、カップル競技の選手は疲弊しきっていました。でもウィバポジェはオリンピックの好調をキープしていて、SDから飛び抜けて元気。そしてFDも元気。しかも最終滑走だったわけですから、余計に演技がよく思えたんです。シーズンが終わってからもこの演技を何度もリピートして、好き度が日に日に増していきました。今思うと、この演技は「ウィバポジェのシーズン一番の演技はなぜか日本で」の始まりでもありました。来シーズンは日本(グランプリファイナル)ではなく、韓国でありますように。

9.アリオナ・サフチェンコ&ロビン・ゾルコビー 2011年グランプリファイナルLP:ピナ・バウシュ プロトコル
SP:69.82(2位) LP:142.44(1位) 総合:212.26(1位)
サフゾルのベストパフォーマンス。インゴ・シュトイヤーの最高傑作。ふわっとスローフリップから始まり、3Tのシークエンス。ダンスリフトからスパイラルへの流れが素晴らしいコレオシークエンスにいつの間にか変わっています。変な振付はピナ・バウシュの映画の中にあったダンスをモチーフにされています。ふしぎなおどりがたくさんなので、少々アクロバティックなエレメンツをやる程度では、テーマ負けしないというメリットがあります。定番曲でのアクロバティックエレメンツは曲から浮きかねないのです。当時世界のトップだったので、芸術性を高める方向に走りました。そして、ペア競技の可能性をまた広げてくれたと思います。次のシーズンのボレロはやりすぎた感は否めませんでしたが、イロモノを滑ってこそのサフゾルです。それも、らしかった。

8.ウェンジン・スイ&ツォン・ハン 2017年四大陸選手権SP:Blues for Klook プロトコル
SP:80.75(1位) LP:144.28(1位) 総合:225.03(1位)
フラメンコから約1年。スイちゃんは両足の手術を経て、強くなって戻ってきました。イーグルからの3Tの同調性に引き込まれます。そしてスローフリップ。昔ほどの高さはなくなりましたが、チェック姿勢が美しくなり、プログラムの落ち着いた雰囲気に調和しています。昔のDVスロージャンプではこうはいきません。ギターの音色に乗り、巧みにターンを踏み、スピードに乗っていく姿が清清しいです。ワンレンのスイちゃんは大人の女性を飛び越え、2人子持ちのシングルマザーで、フィリピン人を雇っているスナックのママばりの雰囲気を帯びています。でもまだ21歳なんです。なかなか辞めさせてもらえない中国ペアですから、あと3回はオリンピックに出るでしょう。そうなれば2026年には30歳。先が楽しみです。ペア競技の可能性をどこまで広げてくれるのでしょうか。

7.小塚崇彦 2014年全日本選手権LP:Io Ci Saro プロトコル
SP:72.39(6位) LP:173.29(2位) 総合:245.68(3位)
SPの出遅れが大きかったですし、当時4回転を2本も入れるのは無謀とも言える状態でした。それでも回転不足になりながらもしっかりと着氷し、抜いていた3Loを組み込み、得点源の3Aはクリーンに成功させました。ジャンプさえ降りればあとは彼の時間です。方向転換のスリーターンですら美しく見せ、コレオシークエンスでは神々しく足をスウィングさせイーグルへ。そこからバレエジャンプ、美しくSのラインを描きコンビネーションスピンへ。最後の最後にシンプルかつ最上級に磨かれた滑りで魅了させてくれます。完全に泣かせにかかっています。全日本選手権でトップ3に入りながらもオリンピック代表落選を味わい、現役続行。上が一人もいなくなり、下からの突き上げもあったシーズンでした。そこで自分のこだわりを出し切り、不完全ながらも魂が込められた演技を披露してくれたのです。3BKの三男がお父さんのような包容力を醸し出しました。

6.ユナ・キム 2013年世界選手権LP:レ・ミゼラブル プロトコル
SP:69.97(1位) LP:148.34(1位) 総合:218.31(1位)
2011年世界選手権から休養し、2012年末のNRW杯で復帰。国内選手権に出場するもキレはなく、さすがの彼女でも年齢とブランクには勝てないと思われました。世界選手権SPでは悪くはないけどよくもない微妙な滑り。そしてLPは最終日の最終種目。それまでの演技は壮大な前振りだったのかと思わせる完璧な演技でした。ジャンプの質はさることながら、弱点だったフットワークを、エレガントな上体の動きと同化させることによりカバー。休養前より何倍も美しくなりました。エポニーヌになって演じる演技中盤、マリウスへの詮ない思いを抱きながら雨の中を歩く姿に心を打たれます。音楽が変わり革命に燃える姿を演じるパートは、オリンピック連覇に向けリンクに戻ってきた彼女の姿が重なり、これもまた心を揺り動かされるのです。演技全編にわたって、美しい腕の動きが散りばめられています。腕にも顔がついていると言えるほどに、彼女の腕の表現力は豊かです。これほど腕の使い方がきれいな選手は、これから現れるのでしょうか。日本では嫌韓をこじらせた方々に気を遣わなければならないので、ユナ・キムへの賞賛は封殺されがちです。賞賛があっても「在日・売国」で片付けられるのです。でも、こんなに素晴らしいスケーターを穿った目で見るのはすごく悲しいことです。どこそこの国が嫌いなのは棚上げして、フラットな目で競技を見られる人が増えれば嬉しいです。

ここから神演技。

5.羽生結弦 2017年世界選手権LP:Hope & Legacy プロトコル
SP:98.39(5位) LP:223.20(1位) 総合:321.59(1位)
LPでの逆転が可能な採点方式とはいえ、SP上位=調子がいい証拠ですし、リードがある精神状態は圧倒的に有利なはず。SP5位で点差があり、少しでも気持ちがブレればジャンプのタイミングに乱れが生じ、金が銀に銅に表彰台外にと落ちていく。そのような状況で、机上の空論スコアを期待するのは、かなり酷だと思いました。3回転ジャンプだけのプログラムならともかく、4回転4本&後半に3A3本でコンボ全弾ですもの。それがなんということでしょう。すべてクリーンではありませんか。4本の4回転だけで加点が10点。他選手の加点と差し引きすると、ここだけで3回転ジャンプ1本分のアドバンテージがあります。すごいのはジャンプだけではありません。風、水、草木、太陽。自然を統べた美しさがありました。谷川を伝った雪解け水が、やがて大河へと姿を変える。茶色一色だった山に新芽が芽吹き、やがて新緑に包まれ、初夏の優しい風が里山を吹き抜ける映像が流れてきます。四大陸ではジャンプのスーパーリカバリーがあっても表現面はまだまだで、このようなビジョンは浮かびませんでした。世界選手権で完成形を見せられました。BSプレミアムの番組をフィギュアスケートのプログラムに落とし込むとおそらくこうなります。情操教育によさそう。

4.パトリック・チャン 2011年カナダ選手権LP:オペラ座の怪人 プロトコル
SP:88.78(1位) LP:197.07(1位) 総合:285.85(1位)
4回転はパンク時のリスクが高く、回転不足となるとほとんど点数がもらえないため、挑戦するメリットがない時代が続きました。それがこのシーズンから基礎点が10点を超え、アンダーローテーション制度が導入されたことにより、挑戦しやすい状況になったのです。前シーズンまでは完成度重視で4回転導入に消極的だったPさんが、4回転をバンバン入れ始め、自ら4回転時代の口火を切りました。そして4回転ジャンプとモンスタースケーティングが同居させるとんでもないスケーターが誕生したのです。カナダ選手権では4Tを2本に増やし、それを難なく成功。前シーズンから振付を一新したプログラムは、Pさんの滑りのダイナミズムが一層生きるものとなり、氷をガシガシと掴むコレオシークエンスに圧倒されました。Pさんを超えるにはジャンプもスケーティングも表現もすべて一流にならなければならず、自分の得意なことだけをやればいい時代は終わりを迎えました。ここから続くパトリック・チャン時代の始まりを告げた演技でした。国内選手権とはいえ、197点というスコアが存在するとは考えもしなかったです。

3.羽生結弦 2015年NHK杯LP:SEIMEI プロトコル
SP:106.33(1位) LP:216.07(1位) 総合:322.40(1位)
度肝を抜かれました。あまりに完成された演技だと、具体的な感想が何一つ出てこなくなるんです。「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおすげええええええええええええええええええええええ」が、この演技に最も相応しい言葉です。当時本当にそんな感じでした。日本人が日本のキャラクターを演じようとすると、細かくこだわりすぎてしまって、伝えたいことが分からなくなる。それを防いだのがカナダ人のシェイリーン。外国人のフィルターを通すことによって、日本らしさに縁取りがされて理解しやすくなりました。日本のプログラムとはいえファンタジーですから、エンターテイメント性を加えられたのも成功の大きな成功要因でした。世界一難しいジャンプの3Lz前は、机をバンバン叩きながら応援しました。そして演技が終わる前から手の震えが止まりませんでした。比喩ではなく、リアルに手がブルブルと震えてキーボードが上手く叩けなかったです。「僕は歴史的な瞬間を目撃してしまったんだ」と思いました。Pさんがすべてが一流でないといけない時代へとフィギュアスケートを押し上げましたが、羽生はそれをさらに押し上げた。一流ではなく、GOE+3の完全無欠を目指す時代が幕を開けたんです。そうでなければ、4回転の本数を増やすしかない。でも増やすだけで他が疎かになってはいけない。いずれにおいても羽生を超えるための戦いになりました。3Aの登場、4回転の登場のように数字ではなく感覚的なものなんですけど、この演技の前と後では競技が変わっているとさえ思います。

2.鈴木明子 2013年全日本選手権LP:オペラ座の怪人 プロトコル
SP:70.19(2位) LP:144.99(1位) 総合:215.18(1位)
まず、控えめだけどキラキラとゴージャスな衣装が素晴らしい。ジャンプがノーミスだったのはもちろん素晴らしいんですけど、チェック姿勢をとってから手を降ろす動きまで曲に合わせるなど、ベテランらしい小技が随所で光っています。前半3本のジャンプを勢いよく降りたのに、次のステップシークエンスでは喜びに溢れたクリスティーヌを柔らかく演じます。エレメンツを終えると共に一気に表情を強張らせ後半のジャンプに向かいます。この切り替えが素晴らしい。コレオシークエンスはプログラムのハイライト。かどかわされながらも、慈愛に満ちた心でファントムの氷のような心を溶かすクリスティーヌがそこにいます。28歳まで競技を続け、全日本は13度目の出場。最後の全日本でこれほどの演技ができるなんて、最高の去り方ではありませんか。点数が渋い全日本のジャッジも9点台を並べる、文句なしの神演技でした。カナダ選手権なら10.00が15個は出ていたでしょう。

1.チン・パン&ジャン・トン バンクーバーオリンピックLP:見果てぬ夢 プロトコル
SP:71.50(4位) LP:141.81(1位) 総合:213.31(2位)
2005年のグランプリファイナルで最下位に終わり、解散話まで持ち上がった2人。トリノオリンピックでは素晴らしい演技だったけれど、同門の2組に破れ4位。一度は世界チャンピオンになりますが、その後は後輩のちゃんずの後塵を拝すことが増えました。それに加え、バンクーバーオリンピックのシーズンには先輩の雪組が現役復帰し追い詰められていました。ところがどっこい、グランプリシリーズが始まってみると、2人はかつてない好調でした。このシーズン、スロージャンプは1本も失敗することなく、全試合の全ジャッジから一度もマイナス評価を受けていないことからもそれが分かります。バンクーバーオリンピックではSPでレベルの取りこぼしとタイムオーバーが響き4位スタート。3位とは少し点差がありました。運命を結する演技。課題のソロジャンプをクリアし、ひとつひとつのエレメンツを噛み締めるように実施していきました。それまでの苦労が吹き飛ぶ最高の4分半。2人のこれまでのストーリーが走馬灯のように流れてきて、感動その一言に尽きます。素晴らしい演技に共通することですが、すごすぎて感想が出てこないですね。追い上げ及ばず銀メダルでしたが、念願の表彰台に立てました。その後二度目の世界チャンピオンにもなりました。トン兄の度重なる膝の不調にも負けず、休養と復帰を繰り返し、数々の記録を打ち立てました。世界選手権の出場16回は、121年の歴史を持つこの同大会の最多記録です。今では結婚し子供も設けました。これは映画化決定案件でしょう。見果てぬ夢を叶えた2人の演技が12シーズンのファン生活の中で第1位です。

ベストパフォーマンスは以上となります。上記の通り、トップ5からは僕の中での神演技です。フィギュアスケートはジャンプさえ決まればいいものではありませんから、僕の中ではノーミス=神演技と自動認定されることはないです。逆を言えば、転倒したって神演技になり得ます。人それぞれの神演技ランキングがあっていいんですよ。ランキングをつけるのは死ぬほど迷うので、ぜひやってみてください。自分がファンだということを差し引くとさらに迷います。ジェフリー・バトルファンであり、テサモエファンなのですが、ジェフはランキングに入れていないし、テサモエは26位に入っただけです。自分にシビアになると、こうなります。日本選手に情を入れ過ぎるのは止めようと思ったんですけど、それでも上位に日本選手がたくさん入りました。それだけ日本には素晴らしいスケーターが多いということです。北米に偏っているのは、僕が見始めた頃北米が強かったので、好みがそっちに寄ってしまったのでしょう。最近の演技の方が多いのは単純な理由で、昔よりも上達しているからです。

国別
アメリカ12:日本11:カナダ8:ロシア・フランス・中国4:イタリア2:フィンランド・ベルギー・カザフスタン・ドイツ・韓国1

カテゴリー別
男子17:女子12:ペア12:アイスダンス9

シーズン別
2005-2006シーズン:1
2006-2007シーズン:1
2007-2008シーズン:2
2008-2009シーズン:0
2009-2010シーズン:8
2010-2011シーズン:2
2011-2012シーズン:5
2012-2013シーズン:4
2013-2014シーズン:10
2014-2015シーズン:3
2015-2016シーズン:9
2016-2017シーズン:5続きを読む
2017
06.17

Top 50 performances of All time *16-32*

http://sthmytkh.blog108.fc2.com/blog-entry-3070.html の続き。ベストパフォーマンスパート2です。

32.マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー 2015年エリック・ボンパール杯SD:ハレルヤ プロトコル
SD:64.45(1位) パリ同時多発テロ事件のためフリー種目が中止 総合:64.45(1位)
トップ選手というものはジュニア時代から才能豊かで、順位が伴わなくても「伸びる」という予感はするものです。カップル競技ではシニアに上がってからの組み換えが少なくなく、この2人もそうでした。そのような場合でも、組んで2シーズンもすれば伸びる伸び悩むというのはなんとなく分かってきます。彼らは2、3シーズン経っても個性をこれといった売りを見つけられず、若手がシニアに上がると一気に抜かれる可能性も見えていました。しかしながら、2015年にモントリオールに移ってからは状況と路線が激変。アイスダンサーに必要な「エロ」が絶対的に不足しているのをカバーする、人間臭いプログラム。人と人とのコネクションを極限にまでリアルに演じる路線がハマりました。マディソンは兄とのカップルを解消して、このカップルを結成しましたが、結成当初は不安な気持ちが多かった。そんな彼女に堂上が歌い聞かせたのがハレルヤです。女性ダンサー随一の高い技術力が、2人の結成から新天地での飛躍を表現し、観客に訴えかけます。それまでとのあまりの変貌っぷりにあんぐりとしてしまいました。これを起点に快進撃が始まりました。これからの1、2年で世界選手権のメダリストになることは疑いようがありません。自分たちに合う環境にいることが大切だと証明した好例です。

31.イザベル・デロベル&オリビエ・ショーンフェルダー バンクーバーオリンピックFD:見果てぬ夢 プロトコル
CD:37.99(6位) OD:58.68(7位) FD:97.06(6位) 総合:193.73(6位)
何十回と観てきたのに、未だに瞳が潤んでしまいます。2008年世界選手権の優勝で初めて表彰台に立ち、次のシーズンにはファイナルも獲りました。何事もなくオリンピックまで2人の時代が続くと思われましたが、イザベルが怪我。その後妊娠が発覚し、リンクに戻ったのは大会の3ヶ月前でした。プログラムの全貌が分からない状態で、オリンピックがぶつけ本番でした。CDとODから察するに完全な仕上がりにはなっていませんでした。メダル争いから後退し、最後の演技。お馴染みの小芝居から始まり、「私はバレリーナになりたいの」「僕はスタントマン」「それか私は美容師になりたい」と台詞入りの音源。スパイラルを入れてから、最後まで上達しなかったツイズル。ここですでに涙が出ます。「あー最後までデロションだな」と。2つ目の台詞「私は自分の国のために滑りたいの、そんな見果てぬ夢を見てる」で衣装をチェンジし、子供から大人へ成長。これは2人の生き様。生き様を描くためにリンクに戻ってきてくれた。キスクラでスケート靴を脱いで掲げるデロベルの姿を見て、また涙しました。

30.デニス・テン 2015年四大陸選手権LP:Ambush from Ten Sides for Pipa, Sheng, Guitar, Cello and Orchestra プロトコル
SP:97.61(1位) LP:191.85(1位) 総合:289.46(1位)
シルクロード民族音楽風プログラムに手を伸ばそうと思わないし、振付したローリーもすごい。いくつも曲が転換しますが、その1つ1つに情景が浮かびます。ラクダの背に乗り、殺風景な中央アジアを旅する。道中ではきっと盗賊も現れるでしょう。危険を回避しながらオアシスで一息。雄大なモンゴルの平野を抜け、人々の行き交う賑やかな長安へと辿り着く。ステップから曲が変わり、動きの激しさが増します。ここでテンくんのダンスのキレが生きます。どうして氷の上でこれほどまでに素早く動けるのでしょうか。ステップシークエンスは全ジャッジから+3評価を受けているわけですが、+3以外つけようがないでしょう。でもステップ単体が優れているというよりは、このプログラムの終盤に配置されたからこその+3だと思います。前半の表現があり、その対比での激しいダンスが作用し、GOEもPCSも相乗効果で引き上げました。2月男の称号を確かなものにした演技でした。

29.髙橋大輔 2012年世界選手権LP:Blues for Klook プロトコル
SP:85.72(3位) LP:173.94(3位) 総合:259.66(2位)
4回転を入れる選手が急増し、男子の技術レベルが上がり始めたシーズン。この大会は上位勢の大きなミスが少なく、とても見ごたえのある試合でした。Blues for Klookといえば、当時の僕にとってはユーロの影薄(今となっては死語)選手が前半グループで滑るイメージの曲。4分半も持てせられるのか?という疑問がありました。それをシーズンの前半ですでに解決してくれてはいたんですけど、完璧なのがこれ。曲に大きな変化はないけれど、進むにつれて少しは強くなります。それに合わせて3A-3Tや3Lz-2T-2Loを降りると盛り上がることなんの。場内のボルテージと比例して、彼のキレも倍化されていきます。春先の深夜実況で下がった体温が、38.5℃まで上がってしまったような感覚になります。「どうでした?」と首を傾ける余裕の笑顔が、ブルースのプログラムとマッチしていました。ブルースは哀愁を漂わせるだけではないのだと知りました。

28.フェデリカ・ファイエラ&マッシモ・スカリ バンクーバーオリンピックFD:移民 プロトコル
CD:39.88(5位) OD:60.18(5位) FD:99.11(5位) 総合:199.17(5位)
ゴッドファーザーで使用されていた曲ですが、移民のプログラムとして台詞を吹き込んで使用しました。冒頭のストレートラインリフトと終盤の男女逆転ストレートラインリフトは出港と入港を表現しているのでしょう。シチリア島から出た船が長い航海の末、ニューヨークのエリス島に到達するわけです。アメリカへの期待と不安と、故郷に残した人々への惜別の情が渦巻いているけれど、狭い船の中で身を寄せ合いながら、2人で生きていこうと決意する。ほら、汽笛が聞こえるぞ。当時はリフトのアクロバティック化に反感の声も多く聞こえまして、曲想を反映した、波のように優しい2人のリフトは歓迎されていた覚えがあります。アクロバティックにしないことで、かえって目立っていました。演技を終え抱擁を交わし、ファイエラにキスするマッシモさんはマッシモさん史上一番かわいい。

27.アダム・リッポン 2016年スケートアメリカLP:O プロトコル
SP:87.32(2位) LP:174.11(3位) 総合:261.43(3位)
ジャパンオープンに出場してから、わずか半月の間にLPを作り変えました。前のシーズンのエキシビション曲でしたから、スタートが違うにせよ、急造プロは無理があると思っていました。そして実際に完成したのは傑作。片翼の折れた群れのリーダーの鳥が、傷を癒し空へと羽ばたいていくというストーリー。後半の3連続までは手を胸の前で折り、骨折を表現していますが、そこから少しずつ元気を取り戻し翼をバタつかせていきます。そして仲間を率いて大空へ・・・。4Tの転倒が引き金にストーリーが展開されているようにも思えました。もちろん4T初成功したフランス杯での滑りも見事ですが、ファーストインパクトが5Gぐらいかかったのでスケートアメリカを挙げました。フィギュアスケートでこんなプログラム初めて。アボットくんとのSing Sing Singとはまた別の、陸のダンスとの融合でありました。

26.テッサ・ヴァーチュ&スコット・モイア ソチオリンピックFD:四季 プロトコル
SD:76.33(2位) FD:114.66(2位) 総合:190.99(2位)
テサモエの4年間のプログラムスパンはダンス→ストーリー性のあるプログラム→コンテンポラリー→ロマンティックが守られておりまして、オリンピックシーズンは2大会連続でロマンティックな選曲になりました。隔年でテッサが手術をしたため、なかなか2人の技術バランスが釣り合わずにミスが増え、メリチャリに少しずつ差をつけられていました。団体戦ではミスが出ましたし、SDでは痛恨のレベル3評価を受けました。よほどのことがない限り金メダルはなく、滑走順にも恵まれなかった最終グループ2番滑走。キャリアベストの滑りでした。過剰に難しくしすぎたリフトを排することにより、テッサの美しさをシンプルに見せることに成功。そして、アイスダンスで何を見てるんだ?スケーティングを見てるんだ。そういったダンスファンの乾いた心に水を撒く猛烈にクリーンなステップシークエンス。ダイアゴナルステップの質には心を奪われました。金メダルは獲れなかったし、フラワーセレモニーで半ばヤケクソにハシャぐスコットを見るのは辛かったですが、現役を終えるのに相応しい演技でした。-完-
とはならず、オリンピックの金メダルを逃したことが競技復帰に繋がり、コーチを変更し、さらに上達するのでありました。

25.ナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザ ソチオリンピックFD:星の王子さまと彼のバラ プロトコル
SD:72.78(4位) FD:104.44(4位) 総合:177.22(総合)
ベルアゴ、ドムシャバ、ホフノビ、ファイスカ、カーズ、ホフザボ。同年代のカップルが次々と引退していき、孤軍奮闘していたベテラン。異なるタイプの曲を組み合わせて、オリジナルストーリーを紡ぐ彼らのスタイルを最後まで貫きました。メダル目前での転倒、鼻骨骨折、内転筋断裂など毎年アクシデントを経験しながらオリンピックシーズンへと突入。年齢的なものもあり、フィジカルは徐々に衰えを見せ、なかなかクリーンな演技をできなくなっていました。しかし、オリンピック本番ではそれが幻だったかのようなキレで、ナタリーの緊張時に陥るフラットな滑りも見られませんでした。そうなると、2人の世界に引き込まれていくわけです。王子さまは自分の星から地球にやってきて、自分の小さな星にあったバラを「自分にとって大事なものだった」と気づきます。このプログラムでは最終的に2人は再会できたのかもしれません。それと同じように、演技の際にレベルとスコアに捉われていた自分の心に「楽しむことも大事だよ」と教えてくれました。4分の演技を見て涙を流しましたし、最高に楽しい気持ちになりました。素晴らしい演技でも4位、引退を撤回して出場した世界選手権では3位。2人の望んだ結果ではないと思います。でも、エンターテイメント性とメッセージ性のこもった演技は、心を豊かにしてくれました。引退後ナタリーは出産してISUの技術委員会に入りました。ファビアンは変なTシャツを着るコーチとして活躍しています。

24.クセニア・ストルボワ&ヒョードル・クリモフ ソチオリンピックLP:アダムスファミリー プロトコル
SP:75.21(3位) LP:143.47(2位) 総合:218.68(2位)
前シーズン、すぐにでも解散しそうな雰囲気を帯びていた2人。ニーナ・モーゼル先生のところに移ってから、大の苦手だったトリプルツイストを習得。エレメンツのクリーンさが増しました。改めて見返すと、この演技は船上で刺身に醤油ぶっかけました!ばりの荒削りで豪快なもので、表現面でも垢抜けません。でも若くて勢いがあり、地元の大歓声という後押しも加わり、ウィークポイントがむしろプラスになっていました。プレッシャーがかかる大会でベストの演技ができるなんてタダモノではないです。アラサー世代が多く、若い世代が少なかったペア界にとって、2人の活躍は明るいニュースでした。今ではすっかり大人のペアになりました。険悪なムードはいつの間にやら飛んでいきました。

23.ジェレミー・アボット 2014年全米選手権SP:ピナ・バウシュ プロトコル
SP:99.86(1位) LP:174.41(2位) 総合:274.27(1位)
全米選手権では、グランプリシリーズから編曲が変わったので、グッと分かりやすくなりました。作曲家三宅純さんご本人の編曲なので、「この曲はこういう曲なの!」という意志が垣間見えます。元々使っていたのは旋律が崩してあったり、主旋律がヴァイオリンになる変化の多いものでした。それがシンプルになったので、長身から繰り出されるダイナミックな動きがぼやけず、ダイレクトに伝わってきます。脳に直接語りかけてきます。振付は実はほとんど変わっていなくて、スタートとフィニッシュのポーズが違うぐらいです。編曲の大切さを知ることになりました。左右、インアウト、フォアバック、どの動きでもギュインギュイン進むスケーティングが堪りません。四肢ビヨンビヨンガッツポーズ大好きです。アボットくんはこういったランキングの類をすると必ず名前が挙がります。来シーズンあたり、もう一度挙がってみませんか。

22.アシュリー・ワグナー 2015年グランプリファイナルLP:ムーランルージュ プロトコル
SP:60.04(6位) LP:139.77(3位) 総合:199.81(4位)
ここは非常にこだわったところでして、ムーランルージュ2シーズン目の中途半端な時期の試合をチョイス。148点を出した2015年全米選手権、アメリカ女子10年ぶりのメダルを決めた2016年世界選手権が上がりそうなものですが、こちらなんです。そして、ムーランルージュ名演の次点を挙げるとしてもその2つではなく、3Lzがパンクした2016年全米選手権。2試合に共通することは力みのなさ。それとキンキンに仕上がっていないところ。プログラムは3つのパートに分かれています。ショーガールとして歌っているところ、いつかは成功してここから抜け出したいと願うところ、最後に野望の遂行しなければと決意するところ。特にファイナルでは真ん中のスローパートが少し弱弱しくて、女性らしさが滲み出ているんです。このショーガールは病気を持っていて、ただ野心にまみれた女というわけではありません。だから、女性らしさが一層強調されたファイナルの演技を推したい。見事な演じ分けでした。これがベテランの魅力。フィギュアスケートはジャンプ大会ではないのですから。

21.チン・パン&ジャン・トン 2013年世界選手権LP:エニグマ変奏曲 プロトコル
SP:63.95(6位) LP:130.69(4位) 総合:194.64(5位)
こんなに歩調の揃った演技は思い当たらない。異常なシンクロ具合を見せた演技です。まず冒頭の2Aが2人とも1Aになる時点で異常。そして、中国ペアなのにソロスピンの高速が回転でもズレないというミラクル。出は揃わなかったのですが、ほとんとズレないのは非常に珍しいです。有名なニムロッドへと移り、美しいムーブメントからデススパイラル。珍しくスローサルコウでステップアウトしますが、直後のスローループで立て直しました。長身ペアはスタイルの維持に人一倍気をつけなければならない反面、パンちゃんの歩幅が大きい分、ペアにありがちな女性が引っ張ってもらうシーンが皆無です。この時のパントンを超える、異常なシンクロを見せるペアに早く登場してもらいたいです。

20.髙橋大輔 2011年NHK杯SP:In The Garden Of Souls プロトコル
SP:90.43(1位) LP:169.32(1位) 総合:259.75(1位)
この音楽が一体何をモチーフにしているかは知らないです。でも、このNHK杯の演技をテレビ観戦しているときに頭に描かれたビジョンは、チベットの山々と風にはためくカラフルな布(お経が書かれたタルチョというものらしい)、そしてそれを眺めるチベット仏教の僧侶でした。彼は傍目から見て何かをしているわけではないです。でも頭の中では悟りを開くには・・・と思考を巡らせているんです。無心になるのではなく、思考する若い僧侶です。3Lzの前後の動きも素晴らしくて、まるで心の葛藤のようです。ステップシークエンスのところのイメージは夜。暗闇に灯篭か提灯の明かりがボボボボボと灯り、帯になっていくんです。そこを僧侶が歩いていきます。それが2分50秒でビビビときたインスピレーションもとい妄想。公式見解ではないので勘違いしないでください。僕の中で過去最高に行き過ぎた妄想が繰り広げられたプログラムです。

19.ユリア・リプニツカヤ 2013年スケートカナダLP:シンドラーのリスト プロトコル
SP:69.45(1位) LP:131.34(1位) 総合:198.23(1位)
いい演技はたくさんありますし、オリンピックの団体戦も素晴らしかったのですが、カメラワークと歓声でムードが殺がれるので、カメラワークが非常によく、シーズン序盤で鮮烈な印象を与えたこの大会をチョイス。モノクロ映画に登場する、唯一色の着いた赤い服を着た少女を模した、若いこの時期だからこそ演じられるプログラムでした。シンドラーのリストはメッセージ性が強く、ベテラン向きの選曲だと思いますが、このようなやり方もあるのだと、イリヤ・アベルブフの戦略に感服しました。後半にジャンプが5つ続く、一見すると女子としてはかなり偏った構成。でも、ジャンプを表現の一部にしているんです。街での迫害、ゲットーでの辛い生活、少女ながらに感じる悲嘆が乗せられているようです。スケートカナダの演技は表情も上手に撮られているので、すごく理解しやすいと思います。ちなみに赤い服の少女は本当に小さいので、映画では収容される前に殺されてしまい、遺体が運ばれていく描写がされています。

18.中野友加里 2008年世界選手権LP:スペイン奇想曲 プロトコル
SP:61.10(3位) LP:116.30(2位) 総合:177.40(4位)
女子のイベントどころか、この世界選手権の主役だと言っても過言ではなかった。そんな記憶に残る演技でした。このシーズンは好調で、グランプリシリーズで3Aを安定して決めていました。SP3位の好発進で、LPは最終滑走を引きました。日本女子の世界チャンピオン誕生は決定した局面での登場。3Aが決まり、3Lzが決まり、3連続が決まり、最後のジャンプが決まった次点で、誰もが「間違いない」と確信。最後はトレードマークのドーナツスピンで場内を熱狂の渦に巻き込みました。ところが、出たスコアでは表彰台にも乗れなかった。3Aと3Fの回転不足が影響しました。当時のルールで回転不足にアンダーローテーションはなく、すべて基礎点が1つ下のものになりました。仮に回転不足がなければ合計186点には乗ったので、優勝でした。実際足りてはいなかったし、仕方ないことではあるけれど、そこをなんとか・・・と思わずにはいられなかったです。それでも中野さんは不満な表情ひとつも見せませんでした。潔くて男前。そこにまた惚れました。

17.メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード ソチオリンピック団体戦SP:Tribute プロトコル
SP:73.10(2位) 総合:カナダ2位
ラドフォードさん作曲の、亡きコーチに捧げる楽曲。コーチのポール・ウィルツは、ラドフォードさんが人生で初めて出会ったゲイで、セクシュアリティーを受け入れる上で大きな影響を与えました。テレビで観るゲイは派手な格好をしていて、ウィルツに出会うまで普通のゲイがいることも理解していなかったそうです。さらに補足を入れますと、ラドフォードさんはスケートクラブに男の子が自分1人しかいないような環境で育ったので、余計に先生から受ける影響が大きかったのかもしれません。そんなバックグラウンドを抱えていますので、このプログラムは当然ラドフォードさんメインのプログラム。大抵のペアが女性メインのプログラムを組むものですが、デュハラドは片方がメインになるものが割と多い気がします。田舎の少年がオリンピックの舞台に立つ喜びを爆発させたのが、この演技。愛と喜びに溢れています。後にPさんのプログラムも手がけたラドフォードさんの将来の夢は、作曲家になってアカデミー賞を獲ることらしいです。先生に生きる道標を示してもらった少年が、いまやフィアンセがいるなんて。天国で喜んでいらっしゃるでしょう。

16.カロリーナ・コストナー 2014年世界選手権SP:アヴェマリア プロトコル
SP:77.24(2位) LP:126.59(6位) 総合:203.83(3位)
ソチでメダルを獲り、そのまま引退だと思っていたらまさかの出場。さらに3F-3Tと3Loの本気構成を成功させました。曲が彼女の優しい性格に重なり、あて書きされたのではないかと思えてきます。1800平方メートルのスケートリンクは聖母カロリーナの聖域となりました。天を仰ぎ見てお告げを受けるカロリーナ。すべての人の心を溶かす笑顔は母性に満ち溢れています。スピンはスタンダードながらも、美しい回転を保持。ジャンプの着氷からステップシークエンス、さらにトランジションの一連の流れがシームレスです。長い距離を移動しているのに、ステップシークエンスは実は40秒足らずで実施されています。歴代最強クラスのスーパースケーティング、日本の女性アナウンサーに勝る高度な清廉性、沈黙を守っていた観客が一斉に立ち上がる様子。2014年3月27日のあの瞬間、さいたまスーパーアリーナはアートでした。

つづき http://sthmytkh.blog108.fc2.com/blog-entry-3073.html
2017
06.15

Top 50 performances of All time *33-50*

これまで一度も触れてこなかった演技のベスト。実は10周年のために数年前からとっておいたんです。僕がスケートを見始めた2005-2006シーズンから2016-2017シーズンまでのベスト50演技を3回に分けて発表します。選んで順位をつけるだけで20時間以上。そこからそれぞれにコメントをつけたので、ものすごく時間をかけています。だからこそ自分に素直なランキングが完成しました。

選考基準は「僕の心に残ったか」ただそれのみ!

50.ジョニー・ウィアー バンクーバーオリンピックLP:Fallen Angel プロトコル
SP:82.10(6位) LP:156.77(6位) 総合:238.87(6位)
トリノオリンピックの翌シーズンに大スランプに陥り、ライバルのライサチェクに少しずつ差をつけられていきました。次のシーズンに復活するも、オリンピックプレシーズンには世界選手権代表落選。そんな逆境の中で再復活を果たしたのがこのシーズン。直前の全米選手権で3位だったこともあり、代表3名の中では最もメダルを期待されていなかったでしょう。正直なところ、フィジカルもピークを過ぎた状態でした。「堕天使」のタイトルがつけられたこのプログラムは、フィギュアスケートのメインストリームから外れ、連盟にも世間の声にも縛られず、自分の信念を貫き通す彼自身の生き方を投影した作品に思えました。4回転は入れていないけれど、表彰台を予感させた魂の滑りでした。スコアが伸びず会場からはブーイング。エキシビションにぐらい出してくれたっていいじゃないと思いました。

49.井上怜奈&ジョン・ボールドウィン 2010年全米選手権LP:ピアノ協奏曲第1番 プロトコル
SP:57.77(4位) LP:115.41(2位) 総合:173.18(6位)
当時33歳と36歳の大ベテラン。グランプリシリーズを休んだことはあったものの、トリノオリンピックの後も全米選手権に出場し続けていました。オリンピック出場枠が2つという状況でしたがSPは4位。逆転を懸けたLPでは演技後半でスロートリプルアクセルに成功。ジョンはガッツポーズ&「俺の怜奈見たか!」というお決まりの表情。完璧な演技ではなかったし、0.60の差でオリンピック出場には手が届かなかったけれど、心を震わせる4分半でした。

48.ヴァネッサ・ジェームス&モルガン・シプレ 2017年国別対抗戦LP:The Sound of Silence プロトコル
SP:75.72(1位) LP:146.87(1位) 総合:222.59
このペアの弱点はツイストリフトのキャッチが苦手なところ、女性の技術力が高く男性がそれに見合う力をつけられていなかったところでした。四肢の先端まで神経が通っておらず、エレメンツを決めてもどこかボヤけていて、印象に残らない演技をすることも少なくなかったです。それが昨シーズンから少しずつ変わり始め、ユーロと国別で覚醒しました。全ペアの中で最も高さのあるソロジャンプ、安定感と移動距離が飛躍的に向上したリフト、滑らかさを増したシプレのスケーティング、フリーレッグはつま先までしっかりと気を張っているので美しくなりました。ひとつひとつが積み重なり、ボーカルだけで単調になりそうなプログラムを見事に表現しました。当日券が出るくらいだったので、会場ではライトなファンも多くいたことでしょう。そのファンに投網をかぶせて、ペアの魅力に引きずり込みました。

47.キミー・マイズナー 2006年世界選手権LP:シバの女王ベルキス プロトコル
予選:28.46(B組2位) SP:60.17(5位) LP:129.70 総合:218.33(1位)
サーシャ・コーエンと村主章枝の一騎打ちが予想されたこの大会。2人はこれを逃すと金メダルをもう獲れないだろうとの状況で、若いキミーがハイスコアで逆転優勝をぶちかましました。今では考えられないことですが、この大会で3-3を成功したのはたった3人。キーラ・コルピが3T-3Tを2本、エレーネ・ゲデヴァニシヴィリが3F-3Tを1本です。キミーは予選で降り、LPでは3F-3Tと3Lz-3Tの2本に成功。高得点が出ないはずがありません。3Tの踏み切りが前向きになってないかという議論はありましたし、後々ジャンプの回転で苦しむことになるのですが、すべてのタイミングがカッチリハマり、世界チャンピオンの称号を手にしました。こういった優勝の仕方がいかにもアメリカ女子。このツギハギな編曲もどこか愛おしい。

46.エヴァン・ライサチェク 2007年全米選手権LP:カルメン プロトコルリンク切れ
SP:78.99(1位) LP:169.89(1位) 総合:248.88(1位)
国際大会ではすでに結果を残していたけれど、国内ではジョニー・ウィアーに遅れをとっていたライサチェクが、初めて全米を制した大会です。そして彼がアメリカの1番手なんだということを知らしめました。カップル競技に転向してもおかしくないスタイルで、4Tや3Aをシュパッと降りる姿がかっこよかった。シリアスなカルメンのプログラムなのに、ステップでビヨーーーンの振付があるのがポイント高い。箸休め。ジョニーとの関係は、メディアがライバル関係をスパイシーに仕立てやすかったのでしょう。当人は鬱陶しかったでしょうけど、スパイシー煽りもそれはそれで趣がありました。それぐらい2人は対照的で素晴らしかったから。

45.ロス・マイナー 2015年ロステレコム杯LP:クイーンメドレー プロトコル
SP:85.36(3位) LP:163.56(4位) 総合:248.92(3位)
ミスは多くて、4Sで転倒、3Aでお手つき、ステップの直前にスタンブルをしています。でもこれがいいんです。この大会はSPから調子がよくて、LPでもそれをキープ。ミスに左右されない動きのキレが窺えました。Who wants to live foreverはよほどのスキルがない限り、一曲で滑るにはもったりしがち。それをToo much love will kill youを入れることによって、上手く調和することに成功しました。編曲が上手すぎて1つの曲に聞こえるという。もちろんファンの方にとっては違和感しかないでしょうけど、若い頃田舎で暮らしていた自分と、大人になって都会で生きている自分を比較し、感情が行ったり来たりしていると捉えれば、しっくりきませんか。貫禄がついてきたこの年齢の彼だから演じられました。

44.ジェシカ・デュベ&ブライス・デイヴィソン 2010年カナダ選手権LP:追憶 プロトコル
SP:62.87(2位) LP:135.40(1位) 総合:198.27(1位)
懐古プロが続きます。ドキュメンタリーの領域。学生だった2人が出会い、心を通わせるが、行き違い別れを経験。大人になって再会し、「今は満たされているけれど、あの頃は幸せだった」と感傷に浸る。そんな映画のプロットをそのまま氷の上で演じているんです。2人はリアルカップルだった時期があって、別れた後もペアを組み続けていました。2人が重なりすぎるんです。母国開催のオリンピックの選考会という、この上なく気持ちが入る大会でしたしね。スローループの着氷の流れと振付に涙腺にプラスドライバーねじ込まれるぐらい、涙を誘われるのです。

43.小塚崇彦 2011年世界選手権LP:ピアノ協奏曲第1番 プロトコル
予選:165.00(1位) SP:77.62(6位) LP:180.79(2位) 総合:258.41(2位)
世界選手権出場のために選手が現地入りを始めていた3月11日に東日本大震災が発生。異例の4月末開催となり、東京からモスクワへと開催地が移りました。日本からはバンクーバーオリンピックに出場した髙橋大輔、織田信成、小塚崇彦の最強メンバー。3人全員が最終グループに入り、メダルは確実または複数メダルも狙える局面でした。日本のトップバッターは織田信成でしたが、後に語り継がれることになる世界最速ザヤックで一歩後退。髙橋大輔は4Tの踏み切りでスケート靴のビスが外れ、ジャンプに精彩を欠きました。そして小塚崇彦が登場。オリンピックでは両足着氷になった4Tをスーパークリーンに初成功。GOEに0すらつかない完璧な演技と滑りでパトリック・チャンに次ぐ2位につけました。あの日小塚崇彦はヒーローでした。

42.キーラ・コルピ 2012年フィンランディア杯SP:亜麻色の髪の乙女 プロトコル
SP:69.27(1位) LP:111.89(2位) 総合:181.16(2位)
キーラ・コルピが完成した2分50秒。茶葉の妖精のような煌びやかな衣装に身をつつみ、曲名そのまんまの容姿で舞います。湖の畔で居眠りをしていた乙女が、春の息吹で目を覚ます。そんな情景が浮かびます。動きに一切の無駄がなく、ジャンプもスピンもベテランになってからメキメキと質を向上させました。キーラのスピンの質向上は、あっこちゃんのスピンと並ぶ、謎の質改善として僕の中で疑問に残り続けています。この演技は世界のトップ選手になることを予感させました。残念なことに怪我が続き、オリンピック出場を逃し、復帰後もやはり怪我で引退を選択することになりました。でも彼女は、フィギュアスケートの美の象徴として語り継がれていくことでしょう。フィンランドでの試合であるため、観客の大歓声に包まれながら笑顔で喜びを噛み締める様子が最高にチャーミングです。

41.ケビン・ヴァン・デル・ペレン 2010年世界選手権LP:Reflections of Earth プロトコル
SP:73.55(10位) LP:144.88(9位) 総合:218.43(8位)
オリンピックシーズンの世界選手権は別れの大会。彼も引退宣言をしてこの大会に出場しました。そこで飛び出したのが4T-3T-3Tという文字通りの飛び道具。記録に残る最悪のカメラワークの1つとして有名なトリノワールドでしたが、選手越しにコーチを撮影することだけはこだわりを見せていまして、4-3-3を降りた際にグルグル回って喜ぶコーチのリアクションも見物です。2つのお茶汲みステップを挟み、彼らしさを刻み込むことも忘れていませんでした。ケビン・ヴァン・デル・ペレンを凝縮した演技で現役最後に大輪の花火を打ち上げました。喜び方がまるで少女のようです。なお引退せずに引退詐欺をして次のシーズンも続け、さらにもう一度引退詐欺をして2012年に引退しました。これはいい詐欺。

40.安藤美姫 2007年全日本選手権LP:カルメン プロトコル
SP:68.68(2位) LP:135.50(1位) 総合:204.18(2位)
表現者として成長するひとつの転換点となったプログラムだと思います。この前のシーズンはコーチをニコライ・モロゾフに変更し、プログラムの内容はインパクトやジャンプの成功重視に偏っていたように感じました。浅田真央がタチアナ・タラソワ指導の下、着実にスキルを底上げしていましたから、安藤美姫にしか出来ないことを見つける必要があった。それがこの、強い意志を持った女性を演じること。コンビネーションの間に挟まったオーバーターンや、スピンのトラベリングさえも表現の一部に変換してしまうパワーがありました。彼女はシーズンに一度、何かが降りてきたような滑りをすることがありますが、これがまさにそうでした。「降りてきた」演技を見るのが、彼女を見る最大の楽しみでした。

39.パトリック・チャン 2016年四大陸選手権LP:ショパンメドレー プロトコル
SP:86.22(5位) LP:203.99(1位) 総合:290.21(1位)
SP終了時点で1位との差は12点。SP1位のボーヤンは、史上初の1プログラム4クワドの快挙を達成し、最終滑走のPさんはかなり追い詰められた状況。なんせ1つでもミスをすれば逆転は不可能ですから。でもそれを可能にしてしまうのがPさん。ギリギリ堪える着氷というものすらなく、すべてがプラスの質。ミスがなければ当然演技の停滞は起こらないですし、スタミナは削られにくくなります。若い頃からそのテクニックは卓越してしましたけど、それに緩急と起伏がプラスされ、感情が乗り、何倍にも味わい深い滑りへと磨かれました。一体彼はどこまで成長していくのでしょう。巨乳もどこまで成長していくのでしょう。

38.ジョシュア・ファリス 2015年全米選手権LP:シンドラーのリスト プロトコル
SP:90.40(2位) LP:177.58(3位) 総合:267.98(3位)
前シーズンと同じ曲ではありますが、振付は一新されています。ジュニア時代からコーチとの競作でプログラムを作っていました。若いうちの自作プログラムは、自分の得意な動き中心になり、表現が独りよがりになる恐れがあります。振付は年齢や経験から培われる面が大きいでしょうし、あまり肯定的には見ていませんでした。でもこれは本当に素晴らしかった。それまでの僕の考え方を叩き壊してくれました。映画のシンドラーのリストで使われている有名な音源ではなく、ピアノでのシンプルなパートが演技の半分を占めています。そんなピアノパートから始まるステップは、印象的な動きを散りばめつつも物憂げな表情でジャッジにアピール。後半になるにつれて、大きく滑る振付が増えます。それらは自由を求める人々の気持ちを表現しているのかなと感じました。前シーズンのシンドラーのリストは好きなプログラム第1300位ぐらい。これはトップ50に入るお気に入りです。

37.ポリーナ・エドモンズ 2016年全米選手権LP:風と共に去りぬ プロトコル
SP:70.19(1位) LP:137.32(2位) 総合:207.51(2位)
まず驚いたのが、髪をグルグルに巻いたお蝶夫人スタイルで競技会に出場したこと。こんなこと、マンガの世界のフィギュアスケートでしかできないと思っていました。どのジャンルの曲でもエレガント仕上げにするエドモンズが、最高にコテコテだったのがこの時。大げさな手足の使い方、視線の送り方は振付師ルディ・ガリンドの指導の賜物でしょう。主人公のスカーレット・オハラは気が強い行動的な女性ですから、コテコテぐらいがいい塩梅なんです。スピンからフィニッシュせず、コレオシークエンスで突進してくるのも最高にスカーレット・オハラ。リアルお嬢様(多分)のエドモンズだから俗っぽくならず、上手く仕上げられたのでしょう。これは4分間のショートフィルムですね。

36.オクサナ・ドムニナ&マキシム・シャバリン バンクーバーオリンピックCD:タンゴロマンチカ プロトコル
CD:43.76(1位) OD:62.84(3位) FD:101.04(3位) 総合:207.64(3位)
定められているステップなのでやっていることは基本的に同じなのですが、細部の振付はカップルごとに違います。この組はドムニナが顔をそむける振付を多く構成しています。ジャッジ席前でくるんと回ってからワルツホールドから顔そむけ、またくるんと回ってタンゴホールドに変わってから顔そむけ、そむけ&そむけが最高なのです。一番好きなのは最終盤、リンクの左端でレフトフォアインに乗り、極限までディープに倒す、顔そむけに関係のないステップ44。ディープエッジに痺れます。2018-2019シーズンのパターンダンスはタンゴロマンチカ。気は早いですが楽しみです。

35.メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード 2013年世界選手権SP:ラ・ボエーム プロトコル
SP:73.61(2位) LP:130.95(3位) 総合:204.56(3位)
このシーズンは2人がメキメキと力をつけていました。それを支えた3Lz。演技後半のボーナスがあるわけでもないのにわざわざ後ろの方に入れ、続けざまにスロールッツ。ジャンプへの絶対的な自信がなければ成立させられません。この時のサイドバイサイド3Lzが2人のベストです。スピンもきれいに揃っていて、完璧な出来でした。氷を踏み割る勢いで喜ぶメーガンの姿が印象的。オリンピックプレシーズンで母国開催という、この上ないバックグラウンドで、チャンスを物にし、これ以降の躍進に繋げました。ラ・ボエームとはボヘミアンのこと。破れかけのタロット投げて、今宵もあなたの行方占ってみるんでしょうね。

34.エフゲーニャ・メドベージェワ 2017年国別対抗戦LP:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い プロトコル
SP:80.85(1位) LP:160.46(1位) 総合:241.31
当初は昨シーズンのプログラムと構成が似通っており、あまり好きではありませんでした。しかしながらシーズンを通して、安定した素晴らしい滑りを見るうちに、その考えは変わっていきました。9.11テロで父を失い、その喪失感を埋めようと苦悩する子供の心情を描いた映画を元に、恋人を失う女性の姿を演じました。ジャンプの助走がほとんどなく、ジャンプの後をターンで埋めます。タノジャンプは「シェー」にならず、両手タノは美しく上に伸びており、GOE獲得専用のものに留まっていません。テレビ観戦ではそのよさが分かりにくい選手の1人だと思います。現地観戦をして初めて、動きを詰め込むだけでなく、それを正確に実施できているのだと確認できました。彼女はハイスコアが与えられて当然の選手です。

33.ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ 2012年世界選手権FD:Je Suis Malade プロトコル
SD:66.47(4位) FD:100.18(4位) 総合:166.65(4位)
テサモエとメリチャリの二強時代。それに続くペシャブル。この3組は揺るがない。ソチオリンピックまでの4年間の頭は、4番手の椅子を勝ち取る戦いでした。フランス開催の大会でシャンソンのプログラム。きっと観衆にはプログラムの意味がダイレクトに伝わっていたでしょう。プログラムのテンポの変化、ビートという項目を追想シーンのように使うことで、見事に切り抜け、心に訴えかけるラストへと進みます。髪を振り乱し、(計算で)ドレスの肩紐を垂らし、愛を叫びました。2人の演技、そして涙を流すアンジェリカ・クリロワの姿。心をグッと掴まれました。膝を擦って出血したことも、計算されたような偶然でした。

パート2 http://sthmytkh.blog108.fc2.com/blog-entry-3072.html
パート3 http://sthmytkh.blog108.fc2.com/blog-entry-3073.html へつづく。
back-to-top