FC2ブログ
2016
07.06

2015-2016シーズン ハン・ヤン

ハン・ヤン

スケートアメリカ 4位
中国杯 3位
中国選手権 2位
四大陸選手権 3位
世界選手権 26位

SP:Sing Sing Sing
LP:ロミオ+ジュリエット
EX:A Destiny

今シーズンもお茶の間をイラッとさせる振付を考案してくれたローリー。SPの冒頭は漕ぎを少なくしてスピードを出す工夫をしています。バックで1、2、3と準備運動をするように徐々に勢いをつけます。ここで「ここからハンヤンのショーが始まるのよ」とカナダからローリーのアナウンスが入ってくるようです。ブラケットを1つ入れてリンクの端まで行って、ここからクロスが始まります。でも直前までクロスを入れてしまうと、ステップからの4Tとは取ってもらえないのか極力省くように徹しています。まあ昨シーズンのSPと入り同じなんですけどね。でも違うのは後ですね。昨シーズンのイラップログラムは立ち止って次の動きに移行していましたが、今シーズンは流れを生かして足を上げ、膝をついてコンビネーションスピンに入りました。墨をつけ直さずに一筆書きで一気に書き上げたお習字のようです。頭をポンッと叩いてヘにょへにょするプログラムの第1イラッポイントがあります。その表情なんですかね?というものです。そこはおもしろいからいいんですけど、その直後の指をパチンパチンと頭上で鳴らす振付。あれはやらされてる感が強すぎ。ローリーに糸をくくりつけられて、上から引っ張られているような。3Aまでの振付は物足りないです。後半にジャンプを入れるための時間稼ぎのように思えてしまって、もっとこう・・・引くくらいに見せつけるようなイーグルスキルを体得して欲しいです。今のは「僕ハンヤンだよー!イーグルだよー!」という感じ。3Aがダイナミックで、ステップで細かい動きを見せるのだから、このトランジションでも細かい動きを見せて後半への盛り上がりに使うぞーぐらいの勢いが欲しかったです。3Aの入りは四大陸までは昨シーズンと同じでしたが、世界選手権ではロッカーから入っていました。昔の丁半博打レベルの成功率からは脱したので挑戦をしたのだと思います。成功はまたの機会に。3A降りた直後にやる右足プシュプシュする動きかっこいい。3Lz-3Tまでの助走はいい感じ・・・に思えて何か足りない。いや逆でした。邪魔なものを見つけてしまいました。3Lz-3Tが邪魔。ジャンプじゃなくてトランペットの音色に合わせたハンヤンの滑り見せてよ!となります。次このプログラムを見るときは、脳内でジャンプ消滅させます。傀儡子ローリーの操作から解き放たれリンクを入り回るハンヤン。ステップの最初がいきなりレベルを取るためのロッカーカウンターツイズルなんですけど、レベルを取りながらトップスピードに入るすごいやつ。一気にリンクの2/3まで滑ってきて、ダイナミック「へ」(コンパス風味)でジャッジの前まできます。ここでトコトコと駆け出すんですが、ここはちょうど「音楽が鳴り響いたら、みんな街へと繰り出す」という歌詞なのでそのような振付となっているんですね。きっとダイナミック「へ」はドアを蹴破ったのでしょう。ジャッジに指差しするのは、「スウィングしながら歌おうぜ」というお誘いのようです。だからジャッジのおっちゃんおばちゃんはスウィングしなければならないのです。左のアウトと右のインを深く使ったムーブメント、両足でえび反りジャンプ、まさにスウィングの動きでのフィニッシュ。ステップは本当に素晴らしい。昔の見ているこちらが顔を赤らめてしまうような動きではなくなりましたが、まだまだ改善する必要のある踊り心であったり、体や表情の使い方。ここはパンちゃんにスパルタでしごいてもらうしかないでしょう。

ハンヤンがロミジュリで演じているもの、見せたいものは、傍観者から見た立場であるのか、2人を包み込む闇なのか、渦巻く想念なのか。それは結局のところよく分からないから勝手に解釈するとしましょう。でも何を演じているにせよ、ストーリーに沿ったものであるということは間違いないでしょう。前半は3A-3Tと4Tが2つ。しっかりと点数を稼ぐために構成は無難な印象。前半のトランジション同士がワンパターンかなと。胸を張り顔を上げる以外の箇所が基本伏し目がちなのが気になります。抽象的なテーマにするのであれば、ジャンプから表情もきちんと表現の一部にして作り込まないと自己完結して伝わりにくいです。プログラムで1番最初にいいと感じたところは、コレオシークエンスの出のイーグルからのチェンジエッジ。コレオシークエンスは印象に残らないけれど、ここからのトリプルジャンプの流れはとてもいいと思います。後半に入ってからの最初のジャンプの3Aから、グッとインに倒した滑りが静寂の中での感情の高ぶりを表現しているようです。バルコニーでジュリエットと会話をしているロミオの気持ちが熱として伝わってくるような、そんなグッとくるインの滑り。そこから助走の少ない3Loすぐに振付、3Lz-2T-2Loという風に、ロミオに呼応するようにジュリエットも気持ちを高ぶらせていくような。そんな平穏さから一転して、親友のマキューシオがジュリエットのいとこのティボルトに殺されてしまい復讐をするロミオ。そんな復讐のシーンはスピンの間に終わっているようです。このシーンへの入りは3Sを配置することによって、ぶつ切り感の緩和を狙っているのだと思います。この映画の曲を使ってしまうとぶつ切りになるのは仕方ないので、少しでも和らげられてよかった。普段ならステップのリンクの使い方もっとがんばって欲しいというところなのですが、このプログラムのステップは蛇行を多様していて、それがティボルトを殺してしまったことの苦悩、ジュリエットへの思いなどの想念の表現に繋がっていて、これはこれでいいです。ロミオの年齢って16歳の設定らしいので、高校生はそういうものじゃないですか。思いが行ったり来たりって。でも個人的に解釈した結果、これ傍観者でも何でもなくて、単にロミオを演じていただけなんじゃないか?という結論に至ってしまいました。後半の振付がよく練られていて、ネタにされるほど悪いプログラムでもないんです。衣装は完全なる部屋着ですけどね。これをロミオ衣装で演じていれば、なんてことはなく受け入れられたのかもしれません。LPでの課題は高難度ジャンプを入れてもトランジションまで作り込まれたプログラムを滑るということ。トップ選手は助走、跳ぶ瞬間まで表現が洗練されているので、そこに近づけるようにするということでしょうか。苦手なコンビネーションの抜けが減ってきましたし、ジャンプ技術は向上中です。

日本人のヴァイオリニストの曲で滑ったエキシは、競技用プログラムよりも人気だったかもしれないやつ。でもこの曲普通に素敵だし、ハンヤンの滑りとも合いすぎてしまって、競技用だと1シーズン経つ前に飽きてしまっていたのではないかと思うんですよね。それにこのような正統派はオリンピックシーズンまでとっておいて、おもしろいプログラムで表現の幅を広げている途中なんですよ。たどたどしさはありながらも前進はしているわけですから。

今シーズンのプログラムはSPを新しくして、LPは据え置きのようです。LPを使い続けるのであれば前半部分の刷新と衣装は普通にお洒落なやつを希望します。(ハンヤン聞こえますか?脳内に直接話しかけてます。ツーブロック似合ってないから夏の間だけにした方がいいよ。)1番手の座をボーヤンにとられてしまいましたが、4Sにも挑戦するそうなのでまだまだ分かりません。よし、勝て!
Comment:5
2016
06.08

2015-2016シーズン アデリナ・ソトニコワ

アデリナ・ソトニコワ

モルドヴィアンオーナメント 2位
ロステレコム杯 3位
ゴールデンスピン 6位
ロシア選手権 6位

SP:ラテンセレクション
LP:Je Suis Malade
EX:白鳥の湖

頬骨のシェーディングが強くて油絵のような顔になっているSP。3T-3Tの成功率は半分、3Fの成功率も半分でして、ジャンプは大変厳しかったです。3T-3Tを入れており、後半のジャンプは2Aだけなので上位勢の中では1番基礎点が低くなってしまいます。今シーズンマークがつかなかった3Lzが1本しかなかったこともあり、3Lz-3Tの導入は望めません。3F-3Tと3Loを入れられればいいのですが、彼女の詰まるような3Fの着氷からは3Tは難しそうです。3Fは昔から安定感を欠いていますが、今シーズンは高さがなかったのでタイミングを掴みかねていたのかもしれません。待ちのない美しい入りをしているのですが。SDのように急に音楽が変わり、高低差で耳キーんとなり、小島よしおのウェーイをして2Aに入っていく演技後半。2Aの着氷後に蹴り上げてガオーっと吼えてレイバックスピン。ワンハンドビールマンが映えるかっこいい一連の動作だと思います。ステップがリンクの中央からスタートして、蛇行しながら観客側、そしてジャッジ側、観客側の外周を沿うように進んで、また手前の方に戻ってきて、ステップを開始したあたりでスピンをしてフィニッシュ。ステップは40秒間なので、ごくごく平均的な時間ですが、かなり移動距離はあると思います。これはレベル取りのターンの間を両足でのスケーティングやホップを使うことで、しっかり移動距離を稼いだからでしょう。その場で完結させてしまうと、勢いをアピールできませんから。後半はサンバなので、もっとお尻振って、足元細かく動かしてアピールするのがいいのかもしれないですけど、フィギュアスケートですから、しっかりと滑ることに重きを置いたのはよかったです。彼女は滑ってナンボです。僕は「フィギュアスケートは氷上のバレエ」とも「アイスダンスは氷上の社交ダンス」とも考えていない派なので、陸上のダンスを氷の上にそのまま持ってくることに賛成ではありません。いかにスケートの中で美しいかが大切です。健全さが目立っていたので、もっとあっけらかんと楽しそうな雰囲気が出たら、新たな一面が見られていただろうなと思います。彼女は曲に合わせるというより、変曲に対して「おい曲!あたしに合わしてこんかい!」というねじ伏せ型なので、このプログラムもその様にアデリナイズされました。

LPは競技プログラムとしてはとても珍しいリンク際からのスタートでした。部屋の片隅で打ちひしがれている雰囲気を出しています。30m×60mのリンクですから、広さとしては980畳ほどの部屋で打ちひしがれているのでしょうね。3Lz-3Tの後に1回転してから手を前に出して、男に駆け寄るような姿がいいです。SPのステップと同じように両足で滑るところをスピードや距離を出すために上手に使っています。あたし漕いでますよ感を感じません。ロステレコム杯とナショナルの間に少しタイミングを変えたのか、ステップに入る位置が早くなりました。編曲もほんの少しだけ変えました。同時再生してみると分かります。ゆったりとロッカーから入っていくステップは腰をかけていたベッドから腰を上げ、980畳の部屋から灰色の街に出て行くような雰囲気。トレンチコートを羽織っているのに11月の風が骨身に染みる。向こうからやってくる幸せそうなカップルを足早に横切り、小汚いリカーショップに入ってウィスキーを買う。でもそんなウィスキーの味も分からないのよ・・・ぐらいの暗さ。ロシアは18歳から飲酒OKらしいので。変わったステップではないけれど、フレーズをよく捉えられていると思います。後半に入って最初のジャンプが2A-3T。彼女の2A-3Tは現役女子選手の中でも随一の破壊力があります。2A自体1番上手なのではないかと。決まればエレメンツの加点だけではなく、PCSにもプラスになりそうな迫力です。ゴールデンスピンでは2A-3Tを2本を試そうとしていましたが、上手くいきませんでした。点数を取るためには現実的な構成だと思うので、来シーズンもトライして欲しいです。SPと同じく組み込んだワンハンドビールマンは、音楽のビートがなくなってボーカルだけになった位置に入れられています。今シーズンは体力が戻りきっていないので、回転速度をキープできていませんでした。なので強いボーカルに負け気味で加点は抑え目でした。ナショナルですらほぼ+1でした。毎シーズンおかしなポジションをしてくれる変態キャッチフット。体よじりすぎで腸がおかしな位置に入りそう。感情がグチャグチャになる様をよじれたスピンで見事に表していると思います。変態の正しい使い方。彼女のプログラムは男子のように氷をガシガシと掴むスケーティングを生かした女子っぽくないものが多かったですが、今シーズンはかなり女性らしさに重点を置いたものでした。ジャンプと同じくスケーティングも完全に戻っているわけではないように見受けられ、ややパワー不足。最後まで体力が持たないし、上手くごまかしてはいますが、両足で滑る箇所も多かったので物足りなかったです。完璧に戻った状態での難易度の高い演技構成が期待されます。衣装はスカートスケスケでしたが、プリーツのような縦の模様が入っていたので気になりませんでした。スケスケスカートはこうやって処理をすればいいんですね。青より黒衣装の方がよかった。

白鳥の湖よりは、映画のブラックスワンのような雰囲気。昔チュチュ着て滑った白鳥の湖とは正反対のダークな面を見せています。途中からラフに結んでいた髪を下ろして振り乱しながら滑るのもいいです。暗闇の中でスポットライトを浴びながら滑るのが、自身の妄想の中でプリマになりきっている様を見せるのにピッタリです。エキシビションだからこそ成立する演じ方。試合でも使うY字スパイラルの後にやる、ホオズキみたいな形の変なポジションのスパイラル。おどろおどろしさの増幅に一役買っています。1つもジャンプがないのに魅せられます。オリンピックで勝ったのに、ボーカルのムード押しプログラムを滑らないのがありがたい。いや、そんなプログラムは先生たちが滑らせてくれないのかもしれない。

オリンピックで勝ってから1シーズンの休養を挟んで戻ってくることは勇気がいったでしょうけど、戻ってきてくれて嬉しかったです。いい結果は残せなかったですけど、本調子ではないので、ここから上げていけばいいのです。今の彼女の演技を見て「これがオリンピック金メダリストの演技?」と笑う輩はいるでしょうが、僕はそんなやつらに言いたい。ソトニコワは元々そんなに安定感ねえよと。それではオリンピックがマグレか?という話になりますけど、マグレと地元開催というだけでユナとカロリーナには勝てません。勝てるだけの力があったから勝ちました。僕は昔からソトニコワのスケーティングが大好きですし、スケーティングスキルで9点台(インフレしてない状態で)を狙える数少ない女子スケーターだと思っています。だからこそ、一層復活&進歩を望んでいます。元気な姿で普通の編曲のプログラムを滑ってください。
Comment:8
2016
06.07

2015-2016シーズン マキシム・コフトゥン

マキシム・コフトゥン

モルドヴィアンオーナメント 優勝
エリック・ボンパール杯 2位
NHK杯 10位
ロシア選手権 優勝
ヨーロッパ選手権 3位
世界選手権 18位

SP:I Can't Dance
LP:ベートーヴェンメドレー

SPは真っ二つのベースを両面につけた謎の衣装でのプログラム。しかもボディとネックを別々にするという徹底した意味不明っぷり。でも、この衣装を着た理由に対して「ロシア人だから」と一言発せばそれで完結してしまうのです。いや、意味の分からないことをしないロシア人なんてロシア人と言えるだろうか?そうではないだろう。冒頭の4S-3Tは昨シーズンのボレロより跳ぶタイミングが早くなっています。ボレロの音楽よりもノリがいいので、ちゃちゃっと跳ばないと間延びした印象になってしまいますからね。昨シーズンは曲線を使ってリンクを滑るということに気を配っていたように思いますが、今シーズンはリンクを広く使って四方の観客に対してもアピールをしようという戦法に見えました。1番変わったのは姿勢です。コフトゥンの大きな課題の1つがつんのめった姿勢で演技をするところで、それが曲の雰囲気を殺いでしまっていたわけですが、今シーズン演技が大きく見えたのはそれが解消されてきたからだと思います。178cmあるので、男子シングルの中ではかなり高身長の部類にありますので、姿勢がよくなって自分の武器を見せられるようになりました。4Tの後にある助走は2シーズン連続で同じような感じでやっているんですけど、これも今シーズンすごく丁寧になりました。曲調的には今シーズンの方がワイルドになってもおかしくありませんが、丁寧になったというのは押さなくても滑れるようになっている証拠なのでしょう。もう1つ変わったのがステップ中での両足をついたときの動き。ここでの動きの大雑把さがなくなりました。これまでは上体を動かしたり、次のターンを踏むことに気持ちが行き過ぎていたのだと思います。細かいところまで気を配れる余裕が生まれました。変なステップがおもしろかったのは、振付のインパクトを持ってくる箇所がコロコロと変わっていたからでしょうか。3拍目にもってきて、次は4拍目にもってきて、その次の小節は開けて、その次が1拍目と3拍目、さらに3拍目でループ、1拍目でイェイから3拍目からツイズル、その次の小節の2~4拍目でイェイイェイイェイ。この流れが絶妙。曲のちょっと間の抜けた感じとも合います。けれどワールドでは後半に3Aを持ってきたせいで踏むタイミングが少し変わってしまったんです。振付を少し変えてかっこよくしようとしたのか、アホっぽさがなくなってしまって「普通」の方向にメーターが触れて個性も薄れました。点数の点から見ても、振付のバランスから見ても後半に3Aを持ってくることは賛成だったのですが。これがシーズン途中で構成をいじる恐怖ですよ。本来意図していないところまで変わってしまうという。最初の振付をいかに完成されたものにできるか、自分の能力と相談できるかが大切だとよく分かります。これはコフトゥンのみならず全選手に言えることです。少しの変化がプログラム全体の印象に与える影響は、細かく見ればよく分かります。

シーズン最後で予定していたであろうLPのジャンプ構成はこちら。
4S 4T 4S-2T 後半 3A-3T 3Lz 3Lo+2A 3S 2A 69.12
そして昨シーズンはこちら。
4S 4T 4S-3T 後半 3A-1Lo-3S 3Lz-2T 3S 2A 2A 69.83
・・・下がっているのである。シーズン最初は3クワドと3A2本を両立させる構成にしておりましたが、その代わり3Lz抜きという歪さ。コフトゥンは今シーズン出場した試合ではナショナルを除いて、3本中1本のクワドは必ず抜けています。3Fなしで2Aを入れている時点で他選手とは2点の差があるので、このミスをなくせるかどうかです。GOEが一律+2に到達したのはモルドヴィアンでの3Aのみで、国際Aとなると過半数のジャッジが+2は出していない状況です。GOEで点数が積めず挽回が難しいので、他選手以上に抜けがTESに響くわけです。同じ3クワドの選手のジャンプの基礎点はというと羽生が79.69、なんですくんが79.23です。いかに基礎点問題が深刻化が分かるでしょう。勝つためには苦手な種類だからと言って抜いていられないし、3Aは2本にしないといけません。

LPはベートーヴェンの心情を表現しているのだと思いますが、気が緩んで居眠りをしてしまって、後半では気持ちを引き締めて演技をするというのは正しいのか?これはベートーヴェンではなくて、コフトゥンそのものの表現なのかもしれません。このプログラムはチェルニシェフ振付のようですが、とてもシブタニズやウィバポジェのFDを振付けたとは思えないような謎解釈。居眠りのところは会場から「HAHAHA」がないと寂しいです。ワールドでジャンプをミスしまくった後に「HAHAHA」がほとんどなかったときは、空気ヒンヤリでした。もっと笑ってやってくれやと思いました。ワールドでステップの振付を変更しましたが、僕の頭の中では架空のステップが前半に終わって、ステップがコレオシークエンス扱いになっていました。コレオシークエンスにしては進まない滑りですし、体力が余っていたであろうナショナルでもそうでした。華やかな第9の旋律で滑りで盛り上げられないのは、致命的だと思います。筋書きの「気持ちを引き締める」というところも表現しきれなくなりますし。4分半もたせることの難しさはありますが、シニアに上がって4シーズン目ですし、強化しなければいけないところであります。いろいろな試合を見比べて思ったのが、4回転を失敗して表彰式で目が死んでいたユーロは動きが1番よかったということ。コレオシークエンスまでしっかり体が動いていました。ベストパフォーマンスをユーロで見たかったです。衣装はシーズン序盤の袖口やりすぎブワブワブラウスがよかったんですけど、動きにくかったんでしょうか。コミカルなプログラムだからやりすぎなぐらいがちょうどいい。衣装に着られている感もおもしろかったのに。

来シーズンは正念場。ロシアの1番手扱いがコリヤダにシフトしきる前に抜き返さないといけません。今ロシアの代表は2枠。ロシアがオリンピック3枠を取るには、代表2人が完全無欠の演技をするしかありません。現実的に考えると取れるのは2枠です。プルシェンコが復帰すれば、連盟はフィギュアスケート史上初の5大会連続メダルを取らせたがるでしょうから代表枠は1つ埋まっているようなもの。実質1枠に入るためにはナショナル優勝、ユーロロシア1番手です。来シーズンはその準備のシーズン。ジャンプの抜けとスタミナをどこまで改善できるかです。ソチの代表選考は本当に気の毒だったので、あの姿はもう見たくないです。

ファイナルを初めて逃し、2年連続でワールドは惨敗。めちゃくちゃ出たがっていたTCCは怪我で欠場という、不本意なシーズンでした。来シーズンのプログラムを早々に発表しております。曲は違いますが2シーズンぶりにミューズ。成長したところを見せて欲しいです。
Comment:0
2016
05.24

2015-2016シーズン アンナ・ポゴリラヤ

アンナ・ポゴリラヤ

オンドレイネペラトロフィー 2位
モルドヴィアンオーナメント 優勝
中国杯 4位
NHK杯 9位
ロシア選手権 3位
ヨーロッパ選手権 3位
世界選手権 3位

SP:ヴァイオリンと管弦楽のためのボレロ
LP:シェヘラザード
EX:シュニトケのタンゴ

今シーズンはニコライ・モロゾフが振付師になりました。そして生まれたこの抜群のコンビネーション。新たなモロゾフのミューズが誕生したシーズンでもありました。今は18歳ですが、シーズンを戦っていたときは17歳。それでこの色っぽさ。そして長身&手足の長さ。ただ長いだけだと蜘蛛でも手足は長いですから、それを生かしきれたのがよかった。フィギュアスケート界隈での褒め言葉に多用される「大人っぽい」「長身&手足が長い」は、ポゴリラヤのためにあるような言葉です。やたらと使うもんじゃあない。

SPは振付師のCDラックには必ずあるヴァネッサ・メイのやつ。同じアルバムには剣の舞とタンゴ・デ・ロス・エクシラドスが入っていて、スケート界的な目で見れば、そやつらの影に隠れていた曲。それを圧倒的な迫力で演じました。シーズン全欠フォールと命名した、重症を負いそうな転倒のリスクのあるデカい3Lz-3Tで観客を釘付けにして演技が始まります。ジャッジの方を向いてポーズを取り、クイッとブラケット。その姿勢から脚を上にもういっちょクイッがかっこいい。ジャッジを横目で睨む感じもたまりません。「どう見た?あたしの3Lz-3Tすごくない?」と言わんばかり。3Loの入りは昨シーズンと同じです。これをスケーティングムーブメントから即座に行っていると捉えられるかというと、なかなか難しいでしょう。少し待ちがありますからね。インフレしていたモルドヴィアンでは0.84点加点をもらっていますが、成功した中国杯と世界選手権では全ジャッジが+1を出していないぐらいの加点でした。3Fが厳しい以上、ここで確実に点数を取らないと他の選手にTESで遅れをとることになります。試合を見比べていると、ユーロの入りが他の試合より妙に早かったんです。彼女の3Loは、ターンの後に構えて1.7秒前後で踏み切るんですけど、ユーロだけはそれが1.5秒ほどでした。2Loになってノーバリューにはなりましたけど、ユーロの踏み切りタイミングが目指すところでしょう。この0.2秒が踏み切りのタイミングを掴むための一呼吸なのでしょうが、無くせると+2が狙えるのではないかと思います。3Loをスケーティングムーブメントから入れるのは難しいですね。個人的には6種類のジャンプの中で1番構造が理解しえないです。こんなものがどうして跳べるのか。キャメルのキャッチフットはきれいに見せるのが難しいですが、彼女は上体を引き上げて美しく回転しています。体がベチャーンとなってしまうこともよくあるポジションです。2シーズン前は彼女もベチャーンとしていたんですけど、年々柔軟性増してます?ユーロを境に振付が変えられたのが2Aの入りです。スパイラルを無くして方向転換を多様しています。スリーターンからの入りは同じです。僕は変更後の方が好きです。特筆すべきは成功率の上昇。今シーズン失敗したのは、NHK杯のSPでだけでした。あと20発は全てプラスでした。昨シーズンまでのような、かろうじてプラスに乗っかるようなギリギリの着氷がなくなり、流れも出せるようになりました。これは一体何なのか。スピードが上がったのがよかったのでしょうか。世界選手権では着氷後のジャンプをなくしてしまったのがもったいない。統べる感じがかっこよかったのに。ステップはスリーターンから一気に加速して入ります。この入りは序盤の3Lz-3Tの後のトランジションのスタートと似た感じの場所から始めているので、同じ動きを見せることで、後半でも勢いを失っていないということをアピールできていました。リンクを大きく使っていて、肩から肘からしなる腕とのハーモニーがたまりません。迫力が何倍にも増幅します。

LPのジャンプ構成は昨シーズンよし少しだけ下がりました。後半の3Lzを前半に持ってきたので、0.6点だけ少なくなりました。得点源の3つのジャンプを最初に終わらせます。ステップは昨シーズンよりも足首をしっかりと使えているからか、1歩の滑りが目に見えて変化しました。どうぞ昨シーズンの火の鳥と比較してみてください。チョイチョイチョイーという動きが、ズンッズンッズンッという動きに変化しました。シーズンはじめはステップの中にウィンドミルが入っていましたが途中から抜きました。音楽の緩急とのバランスを重視したのでしょうか。急ブレーキをかけて、天に向かって「フアアアアアアアアアアアアアア」とするところかっこよすぎ。高揚感をかき立てます。このプログラムの中で1番好きな振付は、後半最初の2Aの後のトランジションで腕をフニャフニャーとしてから、前傾姿勢になって左足を上げるところです。何かよくわからないけれどいい。3Lo-2Tの後からコレオシークエンス。美しいスパイラルを2つ入れてから2本目の2Aに入っていくのですが、個人的にはここにもう1つ表現のインパクトや余韻が欲しかったです。ユーロの後にコレオシークエンスの出方を変えて、ブラケットから出ることにより、方向転換をせずに余韻を残すような振付にしたのだと思いますけど、それでも物足りないです。すべてを横たえさせるかのような包み込むような女性らしさをふっ・・・と出しつつ、3Fからクライマックスへの盛り上がりへと繋げて欲しかったです。すごく細かいですけど、感覚的にね。僕は今まで彼女の演技に対して、再三「後半の展開力が足りない」と申してきましたが、今シーズンは大きく進歩しました。爆発的にトランジションが増えたというわけではなく、この伸びの要因はスケートの上達にあると思います。スケートが滑るから後半でもダランとしないですし、漕がないからスタミナの消費が抑えられてしっかりと体が動く。それに加えて、盛り上がりを最後の40秒にまとめたという戦略勝ちでもあったかもしれません。火の鳥は音楽の盛り上がりから最後まで70秒もありましたし、表現に割けるところが多くなったのは後半のジャンプが5つから4つに減った功罪ですね。衣装は肌色が衣装の50%を超えてはいけないので、ピンクを使って違反を取られないようにしました。お下品な衣装じゃないのに。ルールBOOOOOOOOOOOO。

エキシビションの衣装の意図はよく分かりませんでした。男と女?人間の2面性?ボリシェヴィキとメンシェヴィキ?なんていろいろ考えられるから、分からなくてもいいや。シリアスなプログラムは、ワールドの北米ポップス祭りの中で光っておりましたよ。おもしろメイクのキャッツ、髪染めたフィフスエレメント、男装からブロンド美女に変身・・・エキシビションに甘えがなさ過ぎて素晴らしいです。

年々体つきが変わりますがジャンプの技術をしっかりと保っています。波はありますが、今シーズンはロシア選手権で始めて表彰台に乗りましたし、世界選手権も自力出場&メダルという勝負強さを見せました。世界選手権のSPではロシア3人の中でPCSが1番でしたし、ポゴリラヤの国内での立ち位置がよくなるかもしれません。とはいえ今のロシアで絶対安全ということはありません。実力的にも他の選手への推しに関してもそうです。来シーズンはSPがミーシャ、LPがモロゾフです。ポゴリラヤも荒ぶる?

今シーズンのオフもポゴリラヤのオシャレポートレイトがフォルダに加わったのですが、引退するころにはどれだけ溜まるか楽しみ。ユーロではタイツを靴に被せずに試合に出ていましたけど、こんなに靴出しが似合わないスケーターもなかなか珍しい。タイツ派は少数派なので貫きましょう。

ここで履き方まとめ
靴出し派→宮原、リーザ、アシュリー、ラジオノワ、ゴールド、本郷、デールマン、ミライ、ソツコワ、リプ、ライチョヴァー、カレン、エドモンズ、レオノワ、ヨシ子さん、シャルトラン、真央、新葉
タイツで全て覆う派→ポゴリラヤ、佳菜子、クチヴァルスカ、トゥルシンバエワ、ソヨン、永井、ジジュン
タイツかかとに引っ掛ける派→メドベージェワ
靴の上部分だけ覆う派(ミラ履き)→ロデギエーロ

ミラ履きって久しぶりに使った。
Comment:10
2016
05.07

2015-2016シーズン 宇野昌磨

宇野昌磨

USクラシック 5位
スケートアメリカ 2位
エリック・ボンパール杯 優勝
グランプリファイナル 3位
全日本選手権 2位
四大陸選手権 4位
世界選手権 7位

SP:Legends
LP:トゥーランドット

開催地を意識したのかもしれない謎の音楽で滑ったSP。ジャンプの順番はシーズンの間に変わっていきました。4T 3A 3F-3Tでスタートしましたが、スケートアメリカからは3A 4T 3F-3Tに難度アップ。かと思えば成功率が低いからか四大陸では4T 3A 3F-3Tに戻し、最終的には4F 4T-3T 3Aになる予想の斜め上をいく成長でした。TCCでは4Fのインパクトにかき消されましたけど、演技後半に4-3を成功さえたわけですね。調べてみますと、これまでにSPの演技後半で4-3のボーナスをもらった選手はいないんですねえ。ボーナスがない時代にやった選手はいるかもしれませんけど、ひとまずこれもすごいということで。後半の2つのジャンプの助走を確保するために、TCCのスピンは前にギュッと詰め込まれました。でも3Aが終わったときには、他のプログラムでも3つ目のジャンプが終わってちょうどいい具合になっています。シーズンを通して、ステップにあまり変化はありませんが、最後の最後だけ変えました。グランプリファイナルから変えたんですけど、最後のところが曖昧になってしまうのを防いだのでしょう。素直にロッカーとカウンターをして、レベル4を取りにきました。作戦が功を奏して、変更してからは全大会でレベル4になりました。昌磨のもう1つ素晴らしいところは、USクラシックのSPのフライングキャメルを除き、LPも含めてスピンがすべてレベル4だったところです。ジャンプに目が行きがちですが、取るとこ取っているから、ミスが出ても高得点が出たのですね。トゥトントンして、「いくぜ!」と最初のジャンプの助走に入るのかっこいい。元が後半に4-3と3Aを跳ぶために作られていないでしょうし、振付のタイミングももちろんそうなので、チームチャレンジカップの演技は妙に軽く見えてしまったのかもしれない。やはり振付と合っている方がいいです。チェンジシットの後の「俺の右手が暴れだすぜ」的な振付が大事だから。前を向いてのスケーティングが目立つところは、これから改善していって欲しいです。ネイティブアメリカンの要素もある音楽らしいので、淡々とした中にも芯の強さを感じました。体を常に動かし続けるステップは、ネイティブアメリカンの土地ではなくなったビルが立ち並ぶ都会に、彼らの精神性だったり、精霊信仰が息づく様を表しているようにも捉えることができました。それも込みでの今の世界なんだよ!みたいな。そんなことを本当に演じているかは知らないですけど、勝手に解釈させてくれい。衣装はこれでよかったのかどうか。男女兼用っぽいデザイン。決してユニセックスではなく男女兼用。

シーズン全体の4Tの成功率は11/24と、半分を切っています。SPでのステップが足りないなどの軽微な減点を省くともう少し上がります。シーズン後半にかけて、LPでの4Tの成功率が下がってしまったのが残念でした。ジャンプの順番にも問題がありそう。そもそもシーズン最初は、冒頭2つが4Tでしたから。そのうち1つを後半に移し、世界選手権では2つの3Aまで後ろに移し、TCCでは4Tが両方後半にきて、3A-1Lo-3Fまで跳ぶクレイジーさ。クレイジーゴナクレイジーだわ。でもこれはフィギュアスケートにおける1つの理想形なわけです。だって、1.1倍ボーナスが取れればTESが上がってハッピーですし、大半のプログラムがハイライトを演技終盤に持ってきているわけだから、演技終盤に高難度のジャンプを成功させれば盛り上がるのは当然。でも実際そんなことはできない。でも昌磨はやってしまった。志高すぎ&スタミナありすぎで怖いぐらいです。ジャンプ3つの後のエレメンツの順番を入れ替えたのは世界選手権の前。スピンステップスピンだったのが、ステップスピンスピンになりました。後半のジャンプを前に、先にステップを終わらせて一息をつくという戦略だと思いますが、チャチャチャンチャン!って盛り上がるところでスピンをするから、音楽と合わなくなりました。ジャンプに力を入れすぎた弊害が。ステップをしてキャメル、その後の「俺の右手が」振付、さらに3Loと3Sと後半に向けての期待感を煽る構成だからこそよかった。世界選手権とTCCで覚えたコレジャナイ感は、ここからくるものだったのかもしれません。3度鐘をついて向かうクライマックス、そこでの2A(3A)-1Lo-3Fは盛り上がらないはずはないし、クリムキンイーグルはやっぱり盛り上がるし、ハイライトがきちんと作られたいいプログラムだと思います。TCCの構成でジャンプに流れがあって、きれいな演技をしていたら鼻水とよだれが一変に流れるほどホゲーーーっとしていたことでしょう。エレメンツの順番を変えてスピンと音楽の表現が気になった以外に、シーズン最初から気になることはボーカル。テレ朝ちゃんのせいでパヴァロッティの声に慣れてしまっているせいか、声の軽さが浮いているように思えてなりません。でも、これを歌っているポール・ポッツの成功劇をなぞって、昌磨にも成功して欲しいという思いが込められているのだとすれば納得はできます。そうではないのなら、普通のオペラ歌手の音源の方がベターでした。これは単なる僕の好みですが。

今シーズンは気分がハイになることが多いのか、単に大きくなって対応力が上がったのか、声が大きくなりインタビューに普通に答えるようになりました。嬉しいような寂しいような。でも「すぃいずわるどしるばめだりすと、まいふれんどふろむじゃぱん、さとこみやはーら by カンペ」や「みやはら・・・・・さとこさん」など、まだまだ英語に対する対応力では安心の昌磨力を発揮しております。これもいつか変わる日がやってくるのでしょうか。

TCCで成功した4Fは、ISUから正式に認定を受けまして、昌磨は歴史に名前を刻んだわけです。これからますますの活躍が期待されます。でも、ワールドは気を張りすぎて、ぐちゃぐちゃになっていましたから、TCCみたいに楽しむ気持ちも忘れないで欲しいです。表彰台に乗るのも慣れたと思うので、隣の人とは腕ではなくて、肩を組んだり、腰に手を回してくださいね。
Comment:7
back-to-top