Luce Wald

フィギュアスケートは好きですか?僕は大好きです。

In one of the stars I shall be living. In one of them I shall be laughing. And so it will be as if all the stars will be laughing when you look at the sky at night.

Top 50 performances of All time *33-50*

これまで一度も触れてこなかった演技のベスト。実は10周年のために数年前からとっておいたんです。僕がスケートを見始めた2005-2006シーズンから2016-2017シーズンまでのベスト50演技を3回に分けて発表します。選んで順位をつけるだけで20時間以上。そこからそれぞれにコメントをつけたので、ものすごく時間をかけています。だからこそ自分に素直なランキングが完成しました。

選考基準は「僕の心に残ったか」ただそれのみ!

50.ジョニー・ウィアー バンクーバーオリンピックLP:Fallen Angel プロトコル
SP:82.10(6位) LP:156.77(6位) 総合:238.87(6位)
トリノオリンピックの翌シーズンに大スランプに陥り、ライバルのライサチェクに少しずつ差をつけられていきました。次のシーズンに復活するも、オリンピックプレシーズンには世界選手権代表落選。そんな逆境の中で再復活を果たしたのがこのシーズン。直前の全米選手権で3位だったこともあり、代表3名の中では最もメダルを期待されていなかったでしょう。正直なところ、フィジカルもピークを過ぎた状態でした。「堕天使」のタイトルがつけられたこのプログラムは、フィギュアスケートのメインストリームから外れ、連盟にも世間の声にも縛られず、自分の信念を貫き通す彼自身の生き方を投影した作品に思えました。4回転は入れていないけれど、表彰台を予感させた魂の滑りでした。スコアが伸びず会場からはブーイング。エキシビションにぐらい出してくれたっていいじゃないと思いました。

49.井上怜奈&ジョン・ボールドウィン 2010年全米選手権LP:ピアノ協奏曲第1番 プロトコル
SP:57.77(4位) LP:115.41(2位) 総合:173.18(6位)
当時33歳と36歳の大ベテラン。グランプリシリーズを休んだことはあったものの、トリノオリンピックの後も全米選手権に出場し続けていました。オリンピック出場枠が2つという状況でしたがSPは4位。逆転を懸けたLPでは演技後半でスロートリプルアクセルに成功。ジョンはガッツポーズ&「俺の怜奈見たか!」というお決まりの表情。完璧な演技ではなかったし、0.60の差でオリンピック出場には手が届かなかったけれど、心を震わせる4分半でした。

48.ヴァネッサ・ジェームス&モルガン・シプレ 2017年国別対抗戦LP:The Sound of Silence プロトコル
SP:75.72(1位) LP:146.87(1位) 総合:222.59
このペアの弱点はツイストリフトのキャッチが苦手なところ、女性の技術力が高く男性がそれに見合う力をつけられていなかったところでした。四肢の先端まで神経が通っておらず、エレメンツを決めてもどこかボヤけていて、印象に残らない演技をすることも少なくなかったです。それが昨シーズンから少しずつ変わり始め、ユーロと国別で覚醒しました。全ペアの中で最も高さのあるソロジャンプ、安定感と移動距離が飛躍的に向上したリフト、滑らかさを増したシプレのスケーティング、フリーレッグはつま先までしっかりと気を張っているので美しくなりました。ひとつひとつが積み重なり、ボーカルだけで単調になりそうなプログラムを見事に表現しました。当日券が出るくらいだったので、会場ではライトなファンも多くいたことでしょう。そのファンに投網をかぶせて、ペアの魅力に引きずり込みました。

47.キミー・マイズナー 2006年世界選手権LP:シバの女王ベルキス プロトコル
予選:28.46(B組2位) SP:60.17(5位) LP:129.70 総合:218.33(1位)
サーシャ・コーエンと村主章枝の一騎打ちが予想されたこの大会。2人はこれを逃すと金メダルをもう獲れないだろうとの状況で、若いキミーがハイスコアで逆転優勝をぶちかましました。今では考えられないことですが、この大会で3-3を成功したのはたった3人。キーラ・コルピが3T-3Tを2本、エレーネ・ゲデヴァニシヴィリが3F-3Tを1本です。キミーは予選で降り、LPでは3F-3Tと3Lz-3Tの2本に成功。高得点が出ないはずがありません。3Tの踏み切りが前向きになってないかという議論はありましたし、後々ジャンプの回転で苦しむことになるのですが、すべてのタイミングがカッチリハマり、世界チャンピオンの称号を手にしました。こういった優勝の仕方がいかにもアメリカ女子。このツギハギな編曲もどこか愛おしい。

46.エヴァン・ライサチェク 2007年全米選手権LP:カルメン プロトコルリンク切れ
SP:78.99(1位) LP:169.89(1位) 総合:248.88(1位)
国際大会ではすでに結果を残していたけれど、国内ではジョニー・ウィアーに遅れをとっていたライサチェクが、初めて全米を制した大会です。そして彼がアメリカの1番手なんだということを知らしめました。カップル競技に転向してもおかしくないスタイルで、4Tや3Aをシュパッと降りる姿がかっこよかった。シリアスなカルメンのプログラムなのに、ステップでビヨーーーンの振付があるのがポイント高い。箸休め。ジョニーとの関係は、メディアがライバル関係をスパイシーに仕立てやすかったのでしょう。当人は鬱陶しかったでしょうけど、スパイシー煽りもそれはそれで趣がありました。それぐらい2人は対照的で素晴らしかったから。

45.ロス・マイナー 2015年ロステレコム杯LP:クイーンメドレー プロトコル
SP:85.36(3位) LP:163.56(4位) 総合:248.92(3位)
ミスは多くて、4Sで転倒、3Aでお手つき、ステップの直前にスタンブルをしています。でもこれがいいんです。この大会はSPから調子がよくて、LPでもそれをキープ。ミスに左右されない動きのキレが窺えました。Who wants to live foreverはよほどのスキルがない限り、一曲で滑るにはもったりしがち。それをToo much love will kill youを入れることによって、上手く調和することに成功しました。編曲が上手すぎて1つの曲に聞こえるという。もちろんファンの方にとっては違和感しかないでしょうけど、若い頃田舎で暮らしていた自分と、大人になって都会で生きている自分を比較し、感情が行ったり来たりしていると捉えれば、しっくりきませんか。貫禄がついてきたこの年齢の彼だから演じられました。

44.ジェシカ・デュベ&ブライス・デイヴィソン 2010年カナダ選手権LP:追憶 プロトコル
SP:62.87(2位) LP:135.40(1位) 総合:198.27(1位)
懐古プロが続きます。ドキュメンタリーの領域。学生だった2人が出会い、心を通わせるが、行き違い別れを経験。大人になって再会し、「今は満たされているけれど、あの頃は幸せだった」と感傷に浸る。そんな映画のプロットをそのまま氷の上で演じているんです。2人はリアルカップルだった時期があって、別れた後もペアを組み続けていました。2人が重なりすぎるんです。母国開催のオリンピックの選考会という、この上なく気持ちが入る大会でしたしね。スローループの着氷の流れと振付に涙腺にプラスドライバーねじ込まれるぐらい、涙を誘われるのです。

43.小塚崇彦 2011年世界選手権LP:ピアノ協奏曲第1番 プロトコル
予選:165.00(1位) SP:77.62(6位) LP:180.79(2位) 総合:258.41(2位)
世界選手権出場のために選手が現地入りを始めていた3月11日に東日本大震災が発生。異例の4月末開催となり、東京からモスクワへと開催地が移りました。日本からはバンクーバーオリンピックに出場した髙橋大輔、織田信成、小塚崇彦の最強メンバー。3人全員が最終グループに入り、メダルは確実または複数メダルも狙える局面でした。日本のトップバッターは織田信成でしたが、後に語り継がれることになる世界最速ザヤックで一歩後退。髙橋大輔は4Tの踏み切りでスケート靴のビスが外れ、ジャンプに精彩を欠きました。そして小塚崇彦が登場。オリンピックでは両足着氷になった4Tをスーパークリーンに初成功。GOEに0すらつかない完璧な演技と滑りでパトリック・チャンに次ぐ2位につけました。あの日小塚崇彦はヒーローでした。

42.キーラ・コルピ 2012年フィンランディア杯SP:亜麻色の髪の乙女 プロトコル
SP:69.27(1位) LP:111.89(2位) 総合:181.16(2位)
キーラ・コルピが完成した2分50秒。茶葉の妖精のような煌びやかな衣装に身をつつみ、曲名そのまんまの容姿で舞います。湖の畔で居眠りをしていた乙女が、春の息吹で目を覚ます。そんな情景が浮かびます。動きに一切の無駄がなく、ジャンプもスピンもベテランになってからメキメキと質を向上させました。キーラのスピンの質向上は、あっこちゃんのスピンと並ぶ、謎の質改善として僕の中で疑問に残り続けています。この演技は世界のトップ選手になることを予感させました。残念なことに怪我が続き、オリンピック出場を逃し、復帰後もやはり怪我で引退を選択することになりました。でも彼女は、フィギュアスケートの美の象徴として語り継がれていくことでしょう。フィンランドでの試合であるため、観客の大歓声に包まれながら笑顔で喜びを噛み締める様子が最高にチャーミングです。

41.ケビン・ヴァン・デル・ペレン 2010年世界選手権LP:Reflections of Earth プロトコル
SP:73.55(10位) LP:144.88(9位) 総合:218.43(8位)
オリンピックシーズンの世界選手権は別れの大会。彼も引退宣言をしてこの大会に出場しました。そこで飛び出したのが4T-3T-3Tという文字通りの飛び道具。記録に残る最悪のカメラワークの1つとして有名なトリノワールドでしたが、選手越しにコーチを撮影することだけはこだわりを見せていまして、4-3-3を降りた際にグルグル回って喜ぶコーチのリアクションも見物です。2つのお茶汲みステップを挟み、彼らしさを刻み込むことも忘れていませんでした。ケビン・ヴァン・デル・ペレンを凝縮した演技で現役最後に大輪の花火を打ち上げました。喜び方がまるで少女のようです。なお引退せずに引退詐欺をして次のシーズンも続け、さらにもう一度引退詐欺をして2012年に引退しました。これはいい詐欺。

40.安藤美姫 2007年全日本選手権LP:カルメン プロトコル
SP:68.68(2位) LP:135.50(1位) 総合:204.18(2位)
表現者として成長するひとつの転換点となったプログラムだと思います。この前のシーズンはコーチをニコライ・モロゾフに変更し、プログラムの内容はインパクトやジャンプの成功重視に偏っていたように感じました。浅田真央がタチアナ・タラソワ指導の下、着実にスキルを底上げしていましたから、安藤美姫にしか出来ないことを見つける必要があった。それがこの、強い意志を持った女性を演じること。コンビネーションの間に挟まったオーバーターンや、スピンのトラベリングさえも表現の一部に変換してしまうパワーがありました。彼女はシーズンに一度、何かが降りてきたような滑りをすることがありますが、これがまさにそうでした。「降りてきた」演技を見るのが、彼女を見る最大の楽しみでした。

39.パトリック・チャン 2016年四大陸選手権LP:ショパンメドレー プロトコル
SP:86.22(5位) LP:203.99(1位) 総合:290.21(1位)
SP終了時点で1位との差は12点。SP1位のボーヤンは、史上初の1プログラム4クワドの快挙を達成し、最終滑走のPさんはかなり追い詰められた状況。なんせ1つでもミスをすれば逆転は不可能ですから。でもそれを可能にしてしまうのがPさん。ギリギリ堪える着氷というものすらなく、すべてがプラスの質。ミスがなければ当然演技の停滞は起こらないですし、スタミナは削られにくくなります。若い頃からそのテクニックは卓越してしましたけど、それに緩急と起伏がプラスされ、感情が乗り、何倍にも味わい深い滑りへと磨かれました。一体彼はどこまで成長していくのでしょう。巨乳もどこまで成長していくのでしょう。

38.ジョシュア・ファリス 2015年全米選手権LP:シンドラーのリスト プロトコル
SP:90.40(2位) LP:177.58(3位) 総合:267.98(3位)
前シーズンと同じ曲ではありますが、振付は一新されています。ジュニア時代からコーチとの競作でプログラムを作っていました。若いうちの自作プログラムは、自分の得意な動き中心になり、表現が独りよがりになる恐れがあります。振付は年齢や経験から培われる面が大きいでしょうし、あまり肯定的には見ていませんでした。でもこれは本当に素晴らしかった。それまでの僕の考え方を叩き壊してくれました。映画のシンドラーのリストで使われている有名な音源ではなく、ピアノでのシンプルなパートが演技の半分を占めています。そんなピアノパートから始まるステップは、印象的な動きを散りばめつつも物憂げな表情でジャッジにアピール。後半になるにつれて、大きく滑る振付が増えます。それらは自由を求める人々の気持ちを表現しているのかなと感じました。前シーズンのシンドラーのリストは好きなプログラム第1300位ぐらい。これはトップ50に入るお気に入りです。

37.ポリーナ・エドモンズ 2016年全米選手権LP:風と共に去りぬ プロトコル
SP:70.19(1位) LP:137.32(2位) 総合:207.51(2位)
まず驚いたのが、髪をグルグルに巻いたお蝶夫人スタイルで競技会に出場したこと。こんなこと、マンガの世界のフィギュアスケートでしかできないと思っていました。どのジャンルの曲でもエレガント仕上げにするエドモンズが、最高にコテコテだったのがこの時。大げさな手足の使い方、視線の送り方は振付師ルディ・ガリンドの指導の賜物でしょう。主人公のスカーレット・オハラは気が強い行動的な女性ですから、コテコテぐらいがいい塩梅なんです。スピンからフィニッシュせず、コレオシークエンスで突進してくるのも最高にスカーレット・オハラ。リアルお嬢様(多分)のエドモンズだから俗っぽくならず、上手く仕上げられたのでしょう。これは4分間のショートフィルムですね。

36.オクサナ・ドムニナ&マキシム・シャバリン バンクーバーオリンピックCD:タンゴロマンチカ プロトコル
CD:43.76(1位) OD:62.84(3位) FD:101.04(3位) 総合:207.64(3位)
定められているステップなのでやっていることは基本的に同じなのですが、細部の振付はカップルごとに違います。この組はドムニナが顔をそむける振付を多く構成しています。ジャッジ席前でくるんと回ってからワルツホールドから顔そむけ、またくるんと回ってタンゴホールドに変わってから顔そむけ、そむけ&そむけが最高なのです。一番好きなのは最終盤、リンクの左端でレフトフォアインに乗り、極限までディープに倒す、顔そむけに関係のないステップ44。ディープエッジに痺れます。2018-2019シーズンのパターンダンスはタンゴロマンチカ。気は早いですが楽しみです。

35.メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード 2013年世界選手権SP:ラ・ボエーム プロトコル
SP:73.61(2位) LP:130.95(3位) 総合:204.56(3位)
このシーズンは2人がメキメキと力をつけていました。それを支えた3Lz。演技後半のボーナスがあるわけでもないのにわざわざ後ろの方に入れ、続けざまにスロールッツ。ジャンプへの絶対的な自信がなければ成立させられません。この時のサイドバイサイド3Lzが2人のベストです。スピンもきれいに揃っていて、完璧な出来でした。氷を踏み割る勢いで喜ぶメーガンの姿が印象的。オリンピックプレシーズンで母国開催という、この上ないバックグラウンドで、チャンスを物にし、これ以降の躍進に繋げました。ラ・ボエームとはボヘミアンのこと。破れかけのタロット投げて、今宵もあなたの行方占ってみるんでしょうね。

34.エフゲーニャ・メドベージェワ 2017年国別対抗戦LP:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い プロトコル
SP:80.85(1位) LP:160.46(1位) 総合:241.31
当初は昨シーズンのプログラムと構成が似通っており、あまり好きではありませんでした。しかしながらシーズンを通して、安定した素晴らしい滑りを見るうちに、その考えは変わっていきました。9.11テロで父を失い、その喪失感を埋めようと苦悩する子供の心情を描いた映画を元に、恋人を失う女性の姿を演じました。ジャンプの助走がほとんどなく、ジャンプの後をターンで埋めます。タノジャンプは「シェー」にならず、両手タノは美しく上に伸びており、GOE獲得専用のものに留まっていません。テレビ観戦ではそのよさが分かりにくい選手の1人だと思います。現地観戦をして初めて、動きを詰め込むだけでなく、それを正確に実施できているのだと確認できました。彼女はハイスコアが与えられて当然の選手です。

33.ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ 2012年世界選手権FD:Je Suis Malade プロトコル
SD:66.47(4位) FD:100.18(4位) 総合:166.65(4位)
テサモエとメリチャリの二強時代。それに続くペシャブル。この3組は揺るがない。ソチオリンピックまでの4年間の頭は、4番手の椅子を勝ち取る戦いでした。フランス開催の大会でシャンソンのプログラム。きっと観衆にはプログラムの意味がダイレクトに伝わっていたでしょう。プログラムのテンポの変化、ビートという項目を追想シーンのように使うことで、見事に切り抜け、心に訴えかけるラストへと進みます。髪を振り乱し、(計算で)ドレスの肩紐を垂らし、愛を叫びました。2人の演技、そして涙を流すアンジェリカ・クリロワの姿。心をグッと掴まれました。膝を擦って出血したことも、計算されたような偶然でした。

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