2015
04.07

2014-2015シーズン ジョシュア・ファリス

ジョシュア・ファリス

NHK杯 11位
全米選手権 3位
四大陸選手権 2位
世界選手権 11位

SP:Give Me Love
LP:シンドラーのリスト
EX:When I Was Your Man

SPは最初のループ、ロッカーから緩やかに始まって回転しながらゆっくりと腕を下ろしながら素敵な雰囲気。3Aの後のイーグルと、左腕くいっと両腕グイッで予備知識なしでもジェフリー・バトルの振付だと分かってしまうぐらいのクド濃い仕上がりです。今シーズンから取り入れたショットガンスピンから(多分)ノンベーシックへの移行が美しいコンビネーションスピンがいいです。バレエジャンプからバタフライでポンポーンと入ってのキャメルスピン。こちらも今シーズンから取り入れたソトニコワスピン(キャメルアップワード)のポジションが素晴らしいです。骨イってしまわないか心配になるけど素晴らしいです。ステップに入ってからくるりと一周するまでのところが好き。ダブルツイズルした後にそれよりも大きな円を描きます。その円の途中にループをして一回転で、モホークで足を踏み替えてブラケット。ここで大きな円が完成するわけです。全部で4つの円を描くことによって、恋心が膨らんでいくかのようなプログラムの広がりを感じるのです。んでもって、Love me! Love me!と爆発するのであります。ステップは4大会のうち世界選手権が一番よかったと思うので、この大会で2つのジャンプを失敗してしまったのを残念に思います。20歳の男の子らしい女々しさであったり、未練がましさ、自分勝手さというものが等身大で感じることができたのが、このプログラムのいい点でした。とてもジェフリー・バトルですけど、このプログラムを彼が滑ると「なんか違うぞ」という感想に至るんじゃないかなと、そう思います。実力とバックグラウンドと戦略と上手く合致したいい例でした。

昨シーズンと同じシンドラーのリストのLPでした。前にもブログにて「昨シーズンのプログラムと並べると、全く振付が違った」と書いたことがあるのですが、本当に違うのです。だからこれを見るときは全くの新しいプログラムだと感じるわけです。SPと同じく3Aからプログラムは始まります。3Aの質が高いというのはそれだけで表現になり得ます。羽生もダイスケさんもヤグディンだってそうです。このシンドラーのリストでいうと、拍手や歓声で温まった場内の空気を、一瞬にして冷たいセピア色のシリアスな空気に作り変えてしまうのです。シットスピンの後の拳を握り締めて腕を開く振付、月並みな振付なのに惹かれてしまいます。ステップの導入部分の箇所は、強制連行が始まってゲットーの中で逃げ惑うけれど、回りは死体に囲まれて隠れる場所も見つからず、道すがら呆然としてしまうような雰囲気があります。目線は下向きです。個人的なハイライトである短い助走からの3Lzと3Sが連続する箇所。この辺りから視線はずっと上向きなんです。希望にすがろうとするユダヤ人たちの不安な表情みたいな表現が抜群です。昨シーズンと大きく違うのは緩急が非常に明確であることです。後半はガリガリと漕いでいないのに、すごくスピードが出て、彼のスケーティングスキルそのものが上昇したのだということを分からせてくれます。この振付は新たに彼自身とコーチのデイモン・アレンが振り直したそうで、僕はてっきりプロの振付師が手を加えたと思っていたのです。若い選手が自分の振付をするのは、自らの可能性を狭めてしまう恐れがあり僕は止めて欲しかったのです。でもここまでの磨き上げられた作品を見せられると、それは人それぞれなのだなと、考えを改めさせられました。4Tは今シーズン成功がなかったものの、怪我がありGPSが1戦欠場になってからのシーズンインだったので、来シーズンに期待しましょう。

彼のイメージは笑顔で正統派のアメリカ男子らしいスケートをするというもの。でもそれが無個性だと捉えられなくもない演技をここ2シーズンはしていたんじゃないかと思えます。正統派はジュニアだと目立つけれど、シニアの正統派に混ざると物足りない印象を受けてしまうのです。今シーズンは不調だったNHK杯でさえ、今までの彼とは違う表現に引き込まれました。いい歳の取り方をしているし、貫禄も出てきました。もっともっと枯れていただいて、素敵な大人のスケーターへ成長してもらいたいです。

ファリスは子供のときは内向的で、一時はブラウンとのライバル関係に悩んでいた時期もあったそうです。でも今はいい友人になっているそう。アメリカはこれから本格的にこの2人の時代になるでしょう。思い出の多いベテラン選手がいなくなるのは寂しいことだけれど、それ以上に若手が実力でベテランを超えて行く姿というのは嬉しいものがあります。それが競技性の向上に繋がるのです。アメリカはまだ戦える。
コメント
KANさんへ

はじめまして、コメントありがとうございます。ファリスのSP本当にいいですよね。作りこまれた「作られてない感」を覚えるプログラムなのが僕はとっても好きです。成長が楽しみですよね。
6番dot 2015.04.11 16:55 | 編集
はじめまして、いつも楽しく拝読してます。特にレビューは6番さんのスケート愛とスケーター愛を感じる大好きな記事です。
地上波放送される以外の試合をほとんど見ない僕は、シニアになった新しい存在に驚くことしばしば。今シーズンの嬉しい出会いはファリス君とピトキーエフ君です。ファリス君のSP、いいですよね。アボット君のサム・スミスと並び、男の弱さや若い欲望みたいなのをひしひし感じます。
僕はスケートに限らず、絵画でも音楽でも、こういう隠しきれない生身の人間性…みたいなのに強く惹かれるので、これからのファリス君の表現と、それを表現するために身に付ける技術が非常に楽しみです。その年齢らしい『男』を見せ続けて欲しいです。
KANdot 2015.04.11 00:05 | 編集
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