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2020
04.25

ベストプログラム

2019-2020シーズンのベストプログラムです。僕の好みによる厳正な選考を勝ち抜きました。

10位 エフゲーニャ・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ(ロシア) EX "SOS d'un terrien en détresse"
振付:ステファン・ランビエール

タラモロをベストプログラムに入れたことはありませんでした。自分でもタラモロをベスト10に入れる日が来るなんて思っていなかったです。高い技術力は持っているけれど、表現面での課題は残っていますから。しかしながら、競技の後のエキシビションでこれを観たときに驚かされました。元々このプログラムは、2018-2019シーズンが終わってから、イリヤ・アベルブフのショーに出るために作った演目でした。少し原曲の意味からは離れていますが、恋愛の物語を演じています。男性はいつもデートに遅刻してしまって、それにうんざりしてしまった女性が「あなたはもうチャンスを逃してしまったの」と突き放してしまうという筋書きです。他の選手なら違和感のある曲と物語の組み合わせかもしれないけれど、タラモロは曲のインパクトを借りるぐらいがちょうどいいのです。2人の感情表現がなんとなく適っているし、モロゾフが髪をなびかせる姿や柔らかいスケーティングにより、良い塩梅でダメな男性と、それを突き放す女性を演じられていました。モロゾフの進化を見られたという意味でのランクインです。競技プログラムもランビエールに依頼してもらいたいぐらいです。ちなみにタラモロが交際していた頃は、この物語のダメ男と同じようにモロゾフが遅刻ばかりしていたそうです。HAHAHA

9位 デニス・ヴァシリエフス(ラトビア) SP"Two Men In Love"
振付:サラ・ドラン

最後まで使わなかった方のSPです。タイトルのとおり、ゲイの恋愛を描いた楽曲です。相手に本気にされていないかもしれないし、未来はないかもしれない。そうやって苦悩するけれど、結局気持ちが溢れてしまう。そういった主人公の気持ちの心の機微が伝わってきました。初めての恋人との関係を重ね合わせてみるのもいいし、あるいはかなり年上の男性との恋愛を想像してみるのもいいかもしれません。最初のジャンプの助走に向かうまでに指をグルグルされる振付があるんですけど、そこの歌詞が"And be with me forever?(永遠に一緒にいてくれる?)"なんですよ。勇気を絞り出して発した言葉なんじゃないかなって。プログラムが進むにつれて、スケートが徐々に力強くなります。コンビネーションスピンからステップシークエンスまでの入りも良いですね。"It's getting louder, and louder, and louder, and louder, and louder"の歌詞のところのツイズルやループターンへの乗せ方とか、腕の広げ方や残し方なんかが絶妙でした。「ああーーーフィギュアスケート観てるわーーー」というプログラムに仕上がりました。音楽表現とエレメンツとスケーティングの三位一体。これこそがフィギュアスケートなのだよ。

8位 アレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー(ロシア) SP"My Way"
振付:ナタリア・ベステミアノワ、イゴール・ボブリン

フィギュアスケートでは引退のシーズンに使用されがちな曲です。お葬式に流す曲としても有名です。それをシニア2シーズン目の彼らが滑るわけです。原曲の意味を忠実に表現しているというよりは、これから2人が輝かしい花道を歩けるように選ばれたのだと思います。インストゥルメンタルにしたのも正解です。既存の歌詞ではなく、自らが演技を通して言葉を紡いでいました。このプログラムをテストスケートで初めて観たときからお気に入りでした。男性の衣装のパンツがダサいこと以外はすべて肯定できます。これからボイコズ伝説の始まりなのです。

7位 カミラ・ワリエワ(ロシア) SP"Spiegel im Spiegel""Allerdale Hall"
振付:ダニイル・グレイヘンガウス

ピカソ作"玉乗りの少女"の絵画にある少女のポーズで演技が始まります。このプログラムの素晴らしいところは、元となった絵画から発想を飛ばせるという点。無邪気に玉乗りをしている少女の脇には、それを見つめる男性がいるわけです。その眼差しは、少女を慈しみつつも、楽しいだけではいられなくなるこれからの彼女の人生を思い悲嘆に暮れているようにも思います。ワリエワの演技からは、そんな周囲の空気感さえも伝わってきます。昨シーズンと同じプログラムですが、必須要素のスピンとジャンプ以外の振付に変更はありませんでした。スケーティングにもグッと深みが増しましたし、四肢の使い方もレベルアップしています。ワリエワは、玉乗りの少女の絵画を観るために美術館に訪れていました。彼女なりに、振付に込める意味を考えながら演じられるようになったのではないでしょうか。コンビネーションスピンは卓越したポジションの独創性と回転速度です。I字ポジションへの移行がワリエワほどスムーズに、音楽から外すことなくできる選手はいないと思います。このプログラムでのコンビネーションスピンが、現役の全選手と頂点だと言い切れます。今の年齢だから、ワリエワだから巡り合えた作品だと思います。

僕は飽きっぽいので、どれだけお気に入りのプログラムでも1シーズン滑れば満足します。だから基本的にベストプログラムには新プロしか入れません。ベストプログラムに続行プロを入れたのは、パトリック・チャンの2010-2011シーズンLP"オペラ座の怪人"、ジョシュア・ファリスの2014-2015シーズンLP"シンドラーのリスト"の2つだけでした。これらの2つのプログラムは、前シーズンの振付を全とっかえしたので実質別プロなんです。僕はノービス選手には基本的にノータッチですが、さすがにワリエワは知っていたので、演技は観ていました。でも響かなかったんですよねえ。今シーズンは振付が同じだけどガンガン響いた。さらに言うと、ロシアジュニア選手権と世界ジュニア選手権の演技が響きました。2シーズンかけて作品を見事に磨き上げました。拍手喝采です。

6位 クセニア・シニツィナ(ロシア) SP"アルフォンシーナと海"
振付:ナディア・カナエワ

入水して自ら命を絶った詩人アルフォンシーナ・ストルニを歌った楽曲です。テーマの性格上、シニツィナは演技中ニコリともしません。滑らかなスケーティングから、自らの最後を思うストルニの言葉が溢れてきます。ストルニが命を絶った10月は、アルゼンチンだと春の終わり。少しずつ暖かくはなってきているものの、夜の海の水はストルニを凍えさせたことでしょう。3Lz-3Tからは砂浜から歩みを進める様子が見て取れます。体を震わせながら、そして苦悩しながら、ゆっくりと暗い海の底へと向かうのです。救いもない、孤独な物語でした。15歳の少女にこういったテーマのプログラムを滑らせることには賛否があるかもしれませんが、僕はこういった年齢だからこそ感情移入ができるのではないかと思うんです。自分が思春期だった頃を思い出してみてください。考えても意味のないことを一晩中考えてしまったり、理由もなくこの世から消えてしまいたいと思ったことはありませんか?この年代を過ぎると生きることに必死で、死が遠い物になっていきます。だから思春期は死に密接な時期だと思うんです。シニツィナはシニツィナなりに、感情を乗せて演技ができたからこそ、このプログラムが完成したのです。

5位 マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ(アメリカ) FD"Egyptian Snake Dance"
振付:マリー=フランス・デュブレイユ、サム・シュイナール

これはヘビですね。とてもヘビです。僕はこのプログラムに関しては物語を深堀したい気分にはならなくて、ただひたすらチョックさんの美しさに耽溺したいんです。まず冒頭のコンビネーションリフトですね。カーブリフト+カーブリフトという組み合わせは、ケースは少ないですが1シーズンに2、3組がやっています。ただし、2つ目を回転系のローテーショナルやステーショナリーにした方が、スピード感でアピールしやすいのです。チョクベイはスピードの出しにくさをカバーするだけのポジションの美しさで魅せてくれました。チョックさんが蹴り上げた足、ベイツさんの太ももに挟んだ脚、ベイツさんの肩に座って組まれた脚、ベイツさんの背中にもたれかかったときの脚線美、リフトを終える際にベイツさんの腰に絡ませる足先まで、すべてのポジションが美しいです。本当のヘビが男性の体に巻き付いているような、そんな感覚に陥ります。チョックさんは人間を超越しました。ダンススピンでは特別変わったポジションを取っているわけではありませんが、アーチの美しいレイバックポジションから、スピンの出でチョックさんがベイツさんの右足に絡みつくんです。ベイツさんはその右足を軸にクルンと1回転してエレメンツを終えます。この少しの工夫だけでGOEがバンバン伸びちゃいます。全体的にゆったりとした曲調なので、終盤のリズミカルなコレオステップできちんとハイライトを強調させて、4分間の中に波を作りました。シャチホコポーズでのフィニッシュはインパクト大です。カップル結成以降、散々微妙なプログラムを滑り続けてきた彼らが、2シーズン連続でハマりプロに当たることになるとはね。マリー帝国に移籍していなければ、今の彼らの成功はないでしょう。

4位 川畑和愛(日本) SP"美しき青きドナウ"
振付:ステファン・ランビエール

王道で華やかなプログラム。醤油ラーメンであり、マグロの握りであり、卵で包んだオムライスなのだ。"こういうのが観たかったんだよ"の極み。膝を使ってゆったりと滑り始め、いつの間にかトップスピードに乗ったかと思うと巨大な3Lz-3Tを着氷します。胸を躍らせつつ、馬車でドナウ川のほとりを走り、シェーンブルン宮殿に到着する様子を描いているように見えました。ステップシークエンスからは絢爛豪華な舞踏会のシーンでしょうね。このステップシークエンスが非常にランビエリスティックな仕上がりです。ブラケットからツイズル、体を屈めて低い姿勢からのヒップ。はい華やかランビポイント1。観客サイドのロングバリアでクラスターをチョクトーで締めくくり、長い脚でアピール。はい華やかランビポイント2。ステップシークエンスの後半部分では、たおやかに腕を動かして上下左右と空間を目いっぱい使って演じていました。小さなジャンプを何度も入れるところが、いかにもなランビエール構成。膝を使って3Loを降りてから、ジャッジの方向を向いて最後のアピールをして2本のスピン。その美しさに舞踏会にやってきた貴族のお坊ちゃんも釘付けになるに違いありません。川畑が持つスケーティングとランビエールの振付が見事な融合を見せました。こういうのもっとください。

3位 ブレイディー・テネル(アメリカ) LP"ニューシネマパラダイス"
振付:ブノワ・リショー

ブノワだからといって奇抜なプログラムばかり振り付けているわけではないのです。坂本のピアノレッスンだってブノワですしね。テネルはパワフルな演技をする選手なので、こういったプログラムはあまり得意ではないと思っていました。ジャンプの力強さは健在ですが、柔らかな音楽表現も適っていましたし、それに合わせて滑りの性格を変化することにも成功していました。特にボーカルが入る中盤からの表現が魅了させられました。古いアルバムを開くと、すっかり忘れてしまっていた昔の恋人との思い出が押し寄せてきた。そんな情景が浮かびます。ステップシークエンスの始まりで立ち止まったときの哀愁を帯びた表情が何とも言えません。ジャッジサイドでイナバウアーでゆったり魅せるパートもいいですね。ジャンプをすべて終えてからのコレオシークエンスで、この演技のトップスピードが出ます。3分以上滑ってもなおトップスピードを出せることに驚かされます。このコレオシークエンスのイナバウアーで、ステップシークエンスと呼応させる工夫も見事です。イナバウアー使うのが上手でした。コンビネーションスピン2つでのフィニッシュは反則です。現役の女子選手で3本の指に入る上手さなのだから盛り上がるに決まっています。シーズン当初は怪我の影響で全体的にスピードが出ていなかったけれど、年明けからはきっちり調子を合わせてきました。多くの観客が感情移入しやすい音楽で、彼女の能力を最大限に生かしつつ、新たな顔も見せてくれました。これぞ女子シングルの演技!衣装はラベンダー色を着続けてほしかったぞ!

2位 リュボーフィ・イリュシェチキナ&シャルリ・ビロドー(カナダ) LP"Je voudrais voir la mer"
振付:マリー=フランス・デュブレイユ、ギヨーム・シゼロン

ベストプログラムのトップ10を選んだその日にビロドーが引退を発表しました。だから選出後しばらくは僕の心が折れていました。フランス語の歌詞なので、正確な意味は理解できないのですが、都会の生活に疲れ果ててしまった男が「海が見たい」と言って想像を膨らませていくストーリーなのだと思います。ミラーの動きからしっとりと始まり、トランジションはイリュシェチキナの柔軟性を生かした振付で彩られています。スロージャンプは海の広さや偉大さを表現しているように見えます。さらに、最後のグループ4リフトでは、朝日が水平線から雲一つない空へ向けて昇っている様子を表現しているのでしょう。倒立から足を前後に開くアクロバティックなポジションで、ストーリーを感動的に盛り立てます。都会の生活に疲れ果ててしまった男は、車を飛ばして海に辿り着き、日の出を見つめることによって心が浄化されたに違いありません。イリュシェチキナもビロドーもペア選手としてそれぞれ課題があったし、今シーズンはミスが多かったけれど、彼らは次のオリンピックシーズンには世界のトップペアとして戦えるはずだと確信していました。それだけにわずか1シーズンでの解散は残念に思います。僕にとってイリュシェチキナは絶妙にツボを突いてくれる存在でして、現役をお休みした2018-2019シーズンを除いて、4シーズン連続でベストプログラムに名前を挙げました。だから来シーズンもイリュシェチキナの滑りが見たい。でもいきなり解散を告げられた28歳のベテランスケーターにポジティブな言葉はなかなかかけられない。この名作は苦い思い出と共に僕の心に刻まれていくのです。

1位 ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン(フランス) RD"Fame"
振付:ロマン・アグノエル、サム・シュイナール

あまりにもベタすぎるチョイス。でも僕の歴代の1位見てもらえば分かりますけど、1位は超ベタなんです。だって多くの人が好きになるプログラムは良いに決まっていますもの。パパシゼは2014-2015シーズン以来2度目のベストプログラムに輝きました。2度目の1位を取る選手は初めてです。なんの栄誉もありませんがおめでとうございます。僕のツボを突いてくれてありがとうございます。アイスダンスのトップカップルというものは、他のカテゴリーよりも芸の幅の広さが要求されます。リズムダンスの課題が毎年指定されますし、高難度ジャンプの成功がプログラムの印象を押し上げてくれるわけでもありません。そして、競技寿命が長いからこそ、同じようなプログラムを滑り続けると単純に飽きられてしまいます。今シーズンはオリンピックの中間年ですし、チャレンジするには最適でした。

パパダキスが"Fame"から引用して、インスタグラムに投稿していた言葉があります。
"成功には成功ではないものがある。成功とは名声ではない。お金や権力でもない。成功とは、朝起きるとやるべきことに興奮して、文字通りドアから飛び出してしまうことである。愛する人たちと一緒に仕事をすることである。成功とは、世界とつながり、人々に感動を与えることである。夢を持っているだけで、共通点が何もない人たちを結びつける方法を見つけることである。最高の仕事をしたと思って眠りにつくことである。成功とは喜びと自由と友情。そして成功とは愛である。"

この言葉って、まさにパパシゼの今シーズンのRDそのものだと思うんです。自分たちがコーチや振付師とコツコツ練習してきたものを、世界中のお客さんの前で披露する。その中にはフィギュアスケートにまったく興味がない人がいるかもしれないけれど、そのような人たちをも魅了する。新たなファンを獲得してエールを送ってもらう。自分たちはさらに良いものを提供しようと粉骨砕身する。さらにファンを虜にしていく。この繰り返しです。今シーズンのパパシゼは、記録の上ではシニカツに敗れてユーロの連覇記録という名声は逃してしまったけれど、観客の心を動かして、それらとコネクトすることができました。Fameの言葉と照らし合わせると、今シーズンのパパシゼは大成功だったのです。とは言ってもパパダキスがタイツ衣装で滑ることにより、スカートで隠されていたスケーティングの粗が目立つことがありました。完璧に見えるパパシゼでも改善すべき場所はあるのです。今シーズンの課題を糧に、さらなる進化を見せてくれることでしょう。ベストプログラムなのに好きなポイントを一言も語っていなかったですね。「明るい気持ちになるから大好き!」それに尽きます。

トップ6は初見でベストプログラム入りが決まりました。初見で入れようと思わなかったのはワリエワとタラモロだけです。徐々に印象が良くなりました。2020-2021シーズンは続行プログラムが多くなると予想されます。さーて来年のベストプログラムは?

過去のベストプログラム
2018-2019シーズン ライラ・フィアー&ルイス・ギブソン FD"ディスコメドレー"
2017-2018シーズン 樋口新葉 LP"007"
2016-2017シーズン アダム・リッポン LP"O"
2015-2016シーズン 宮原知子 LP"ため息"
2014-2015シーズン ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン FD"ピアノ協奏曲第23番"
2013-2014シーズン 町田樹 EX"白夜行"
2012-2013シーズン ネッリ・ジガンシナ&アレキサンダー・ガジ EX"Dance My Esmeralda"
2011-2012シーズン ジェレミー・アボット SP"素敵なあなた"
2010-2011シーズン シニード・カー&ジョン・カー FD"交響曲第3部あがない"
2009-2010シーズン チン・パン&ジャン・トン LP"見果てぬ夢"

過去のベストプログラムへのリンク
2016-2019シーズン(サボってたから3シーズン分)
2015-2016シーズン
2014-2015シーズン
2013-2014シーズン
2012-2013シーズン
2011-2012シーズン
2010-2011シーズン
2009-2010シーズン
若い頃のノリのヤバさは無視してプリーズ。
2019
05.30

ベストプログラム

体力がなくなってやらなくなったベストプログラム。3年間やっていなかったので3シーズンの中からベスト30をピックしようと思います。カテゴリー、所属国等のバランスは一切取りません。選考基準は僕の好みかどうかです。

※クソ長いです。

30 キャロラーヌ・スシース&シェーン・フィルス(カナダ)
2017-2019シーズン FD"I Won't Dance" "Cheek To Cheek"


2017-2018シーズンに好評を博し、なかなか結果の出せなかった2018-2019シーズンのカナダ選手権で復活させたプログラムです。構成の骨組みに変更はありませんが、エレメンツに入るタイミングが変わりました。曲が"Cheek To Cheek"に移る際のエレメンツが、変更前はストレートラインリフトなのに対し、変更後はダンススピンになりました。個人的には、リフトを上げた際に甘い歌声で曲が変わる変更前の構成が好きです。サーキュラーステップをワンフットステップに置き換えると尺が余ってしまうので仕方ないですけどね。このプログラムって「はいはいオタクどもはこういうのが見たいんでしょ?」というプログラムなんですけど、まさにその通りでして、ギャドボワの先生方に地面におでこ擦り付けてお礼言いたいぐらいの良プロです。これで2人が躍進を遂げましたし、世界に名前が知られと思います。「ダンスなんだから踊らなきゃ!ダンスなんだから男は燕尾着なきゃ!」というダンスファンの希望を叶えてくれました。クレームをつけるとすれば、男性が蝶ネクタイを付けなかったところです。なんで胸元開いとんじゃーい。

29 ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ(カナダ)
2016-2018シーズン EX"ゴースト"


エキシビションプログラムで唯一のランクインです。アイスダンスのしっとり系エキシはおもしろみに欠けるものが多々ありますが彼らは違います。2015-2016シーズンまで滑っていたロミオとジュリエットの"Kissing You"でも一味違う上質な大人の恋愛模様を見せてくれました。映画ゴーストでは主人公の男性が暴漢に襲われて命を落とすのですが、男性は恋人を守るために幽霊として現世に留まるのです。女性には幽霊になった男性の姿は見えませんが、やがて恋人に守られていることを理解します。最後に使命を果たした男性が天国へ旅立つ直前に再会します。暗闇でスポットライトに照らされながら滑る2人は、まさにそのクライマックスのシーンを表現しています。突然ゴーストが流行った時期がありましたけど、僕はウィバポジェのゴーストが一番好きです。

28 リュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコビッチ(カナダ)
2016-2018シーズン SP"タンゴジェラシー"


イリモーのキャリアハイとなった2016-2017シーズンの作品です。オリンピックシーズンに復活させました。ホールドを組んでから投げるスローフリップ、足をクロスさせてからスパイラルに移行し入るデススパイラルにグッときます。安易に得意のクリムキンイーグルからのデススパイラルを選択しないのがいいんです。きちんと曲想にあった入り方をしています。随所で女性のラインと柔軟性を活かし、フィニッシュ姿勢までエレガンスを失わない大人のタンゴプログラムでした。嫉妬と情念渦巻くアルゼンチンタンゴも好きですけど、上品なコンチネンタルタンゴも好きです。

27 アリョーナ・コストルナヤ(ロシア)
2017-2018シーズン SP"アディオス・ノニーノ"


「ロシアにこんなやべえやつがいるのか」と知ってしまったプログラム。エレメンツの完成度がジュニア選手としては異次元。シニアの選手を入れても大半のエレメンツの完成度が世界で5本の指に数えられるレベル。それだけでもすごいのに、ジュニア選手で"アディオス・ノニーノ"の哀愁を滑りの緩急で表現するという、表現モンスターの片鱗をも見せました。ステップシークエンスで常に膝が曲がってしまうチームエテリ共通の課題も見られません。案の定2018-2019シーズンは、完成度とPCSで同門のクワドプリンセスたちと渡り合いました。カロリーナ・コストナーさんのような唯一無二の選手に成長してほしいです。

26 ケイトリン・ホワイエク&ジャン=リュック・ベイカー(アメリカ)
2016-2018シーズン FD"愛の夢"


「オタクどもはこういうのが見たいんでしょ?」プログラムその2。はいその通りです。2017年全米選手権でのショッキングな転倒を経て、翌シーズンに持ち越しました。2018年大会でのストレートラインリフトでは拳を握りしめながら見守っておりましたよ。今でも安心できないので大きな大会では気合いを込めてリフトを見ています。トレードマークのカーブリフトをコレオリフトとして使用し、女性が爪先を氷にタッチしてフィニッシュする様は、素足の乙女が清泉に爪先をつけて、愛する人と時間を共にする喜びをしみじみと感じているように見えました。これからもダンスらしい演技で我々をブヒブヒ言わせてください。

25 樋渡知樹(アメリカ)
2017-2018シーズン LP"ラスト・オブ・モヒカン"


柔軟性を活かしたY字スパイラル、クリムキンイーグル、スプリットジャンプなどのトリッキーなトランジションが物語をドラマティックに紡ぎます。クドいほどに詰め込まれたトランジションですが、音楽のフレーズに合わせて雄大に滑る部分との対比はできていると思います。それに、アメリカンインディアンの話は外国人にとってはあまりなじみがないので、これぐらい派手な方が、物語が分からなくても感情移入できるのではないかと思いました。樋渡が男らしい表現をできると知ることができたプログラムです。これからもガンガン雄っぽさを推し出した演技を見せてもらいたいです。

24 ヴァネッサ・ジェームス&モルガン・シプレ(フランス)
2016-2018シーズン LP"Sound of Silence"


ヴァネシプの大躍進を支えたプログラムです。このプログラムで初めてヨーロッパ選手権の表彰台に立ち、初めて世界選手権のメダルを掴み取りました。2015-2016シーズンまでは、ツイストリフトに高さはあるのにキャッチができずに失敗ばかりしていたし、ペア経験者の女性に比べて男性のスケーティングスキルが低く、まっすぐにしか進めないので演技が平面的で見応えが薄かったです。彼らが滑る度にスタンブルしないか常に心配でした。2016-2017シーズンからジョン・ジマーマン門下となり、ツイストの問題が解消され、男性のスケーティングスキルが大幅に向上。それに伴いリフトの移動距離や滑らかさも格段に向上しました。このプログラムは4分30秒の間、ほとんど曲に変化がなく、ボーカルに呼応して滑りの強弱をつけないと退屈な演技になってしまいます。ところが、ジマーマンに移ってからの技術力向上で滑るのが可能になったわけです。スピードを上げて弧を描きながら入る3Sの質の高いこと。シングル選手並みの質のジャンプを、長身の2人がやってのけるわけですから当然迫力も出ます。ジャンプが表現の一部になる日が来るなんて思ってもみませんでした。

23 マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ(アメリカ)
2018-2019シーズン FD"プレスリーメドレー"


結成8シーズン目にして、ついに代表作に出会いました。これまでも悪くない作品はありましたが、初見の印象を超えることができなかったり、レベル取りのために振付を改悪するせいで見どころがなくなることが多々ありました。女性の足の怪我の影響でオリンピックシーズンを不本意な形で終えた上に、技術的なピークは過ぎてしまったのかと思っていました。ところがどっこい、トルン杯でのFDを観た瞬間「これだ!」と思いましたね。演技前半の"Fever"では女性の艶やかを余すことなく見せつけてくれます。リフトへの乗車能力の高さも健在でした。ストップパートの指パッチンがポイントになっていてかっこいい。演技後半は前半に帯びた熱が発火して"Burning Love"に。年甲斐もなく踊り狂ってしまう大人のカップルのようでかわいらしい。キャリアも終盤に近いと思いますが、ここにきて上達するとは思ってもみませんでした。スポーツの世界は何が起こるか分かりません。王道から脇道に入って大正解です。

22 リュボーフィ・イリュシェチキナ&ディラン・モスコビッチ(カナダ)
2017-2018シーズン LP"At This Moment"


早くも僕の偏った嗜好が露わに。イリモー2つ目です。2015-2016シーズンのベストプログラム第8位に、SP"Since I've Been Loving You"を選んだので、3シーズン続けてのランクインです。ほらね偏っているでしょう?でもイリモーの大ファンだったか問われると、そんなこともないんです。僕のツボを押さえまくっていたというだけです。デュベデビの2009-2010シーズンLP"追憶"に通じるものがある、切ない恋の物語を演じました。デイヴィソンがコーチなのも、当時を重ねて観てしまいます。男性がいくら愛を囁こうとも、もう終わってしまった恋を振り返らない女性は男性から視線を外し、距離を置こうとします。その様子が手を取るように分かります。キャリアハイだった2016-2017シーズンに比べ動きがかなり悪く、男性の手の負傷もあり、オリンピックには手が届きませんでした。2010年のケイトリン・ウィーバー、2014年のパイパー・ギルスに続き、市民権を取得したカップル競技の選手が、ほぼ確実であったはずのオリンピック出場を逃す例となってしまいました。逆を言うと、次のオリンピックにはリュボーフィ・イリュシェチキナは出場できるということです。新しいパートナーとともに、オリンピックの夢を掴み取ってもらいたいです。

21 アレーヌ・シャルトラン(カナダ)
2017-2019シーズン LP"サンセット大通り"


ストーリー全然知らないけど曲が大好きなんです。この曲はヴィクトリア・ヘルゲソンが2011-2012シーズンのLP(衣装の袖がもふもふしていた)で使用していました。国際Aに出場するレベルの選手に使われることはあまりありません。僕は映画もミュージカルも観たことはありません。調べてみたところ、このプログラムのハイライトの部分は、落ちぶれたサイレント映画のスターが妄想を肥大させて「私は輝かしい日々を取り戻して見せるの、私がいるべき場所に戻るのよ」と完全に狂ってしまうシーンのようです。シャルトランは3枠もあるピョンチャンオリンピック代表枠に漏れてしまう最悪の時期を経て、このプログラムを続けて使用することに決めました。主人公と重なる部分があったのではないかと思います。カナダ選手権でのカムバックは、夢が夢で終わらないことの証明です。完全復活とはいきませんでしたが、また強くなって戻ってきてくれるでしょう。

20 ユンスー・リム(韓国)
2017-2018シーズン LP"Grand Guignol" "オブリビオン" "リベルタンゴ"


"Grand Guignol"を上手く滑れるスケーターはジェイソン・ブラウンだけだと思っていました。彼女も負けず劣らず素晴らしい。パーカッションの激しいビートにトップスピードから入るジャンプがマッチしています。トランジションでの腕の表現もとてもいいです。このしなやかな腕使いこそ、第2のユナ・キムと認められる所以です。曲が"オブリビオン"に変わり、3Loへの助走の導入部分で腕を広げながら滑っています。まるでピンク色の夕焼け空を物悲しげに飛ぶ一羽のカラスのようです。ジュニアの女子選手としてここまでの表現は完璧だったと言えます。最後の"リベルタンゴ"パートは蛇足だった気がします。それがこの順位に止まった理由です。もう一度"Grand Guignol"に戻る方が自然にまとめられたのではないかと。

19 ベティナ・ポポワ&セルゲイ・モズゴフ(ロシア)
2017-2018シーズン FD"カルメン"


まず、彼女はこの4分間ではカルメンを演じているのかという疑問。パートナーが演じているキャラクターを放置して、ベティナ・ポポワがベティナ・ポポワを演じているという方が正しいのではないでしょうか。これはカルメンではないのです。ベティナ・ポポワの心に潜むヤバいものの具現化なのです。中堅でポポモズほど押しの強いステップシークエンスを2つ滑るカップルはそうはいません。画面から飛び出してきそうな圧は、笑えてくるぐらいです。2017-2018シーズンはこのプログラムで名前を売ったので、2018-2019シーズンは伸びると思っていたら少し下手になっていました(怪我もありましたけども)。年明けには盛り返したので、伸びていってほしいです。くれぐれも静かな曲は滑らないようにしてください。

18 ユリア・トゥルッキラ&マティアス・ヴェルスルイス(フィンランド)
2018-2019シーズン RD"Coco de Chanel" "ブエノスアイレスの春" "ポエタ"


2018-2019シーズンは10試合もの国際大会に出場しました。女性がツイズルでレベルを取りこぼしたのは初戦だけでしたが、男性はRD・FD通して20回中13回もレベルと取りこぼしました。シングル出身とはいえど、近年でここまでツイズルが苦手なダンサーは珍しいです。マルガリオ先生をリスペクトしてとんでもない失敗をしないようにしてください。プログラムはタンゴとフラメンコで構成されています。これは珍しいことではないのですが、このプログラムのいい部分は"ちょうどいい"ところです。2人ともシングルからの転向組なので、滑りやフットワークだけで2分50秒のタンゴを表現するのは、おそらく無理だと思うんです。フラメンコでガラッと雰囲気を変えることで、もっさりとした印象を与えずに済んでいます。ミッドラインステップでストップする部分がいいアクセントになっていました。ルックスは言うことない2人なので絵になります。

17 ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ(カナダ)
2017-2018シーズン SD"Do You Only Wanna Dance"


僕はオリンピックシーズン序盤から疲弊していた。SDが嫌になっていたのだ。毎週末、前半にねっとりさせて後半にサンバ音楽使ってリフトぶん回すという構成を嫌になるほど目にしていたのだ。パターンダンスの課題を考えてもみろ、あれはルンバじゃないか。どうしてルンバよりサンバの方が目立っているんだ。もう嫌だ嫌だああああああああああ……そんな気持ちでいた9月末、オータムクラシックで舞い降りた2人の天使がウィバポジェだったのだ。あっ……サンバがない!舘ひろしの映画"免許がない!"ばりにサンバがない!ボレロで身を寄せ合いながら踊った男女が、軽快なマンボでお互いの心を焦がし合う。そんな姿に胸が躍ります。シーズン序盤とミッドラインステップの振付が変わり、疾走感を重視したものになりました。これは砂浜を駆けてキャッキャウフフしているのでしょう。衣装は赤よりも黒の方がよかったです。大屋政子が付けていそうな南国の派手な髪飾りが素敵でした。アイスダンスでは、オリンピックに出場した24組中21組がサンバを使っていました。ねえ、僕の気持ち分かってもらえます?

16 ヘイヴン・デニー&ブランドン・フレイジャー(アメリカ)
2016-2017シーズン LP"ある日どこかで"


まず第一に僕はこの曲が大好きなんです。同じ曲を使ったマリー=フランス・デュブレイユ&パトリス・ローゾンの2005-2006シーズンFDや、アシュリー・ワグナーの2008-2009シーズンSPが好きでした。でも理由はそれだけではありません。デニフレは2014-2015シーズンを女性の怪我で全欠しました。その間、男性はマリナ・ズエワのところに行って、スケーティングと表現力を磨いていたわけです。ソロスピン後の男性のダイナミックかつしなやかな腕の動きと切ない表情で一気に引き込めるようになったのは、練習の大きな成果と言えるでしょう。そこから得意のリフトで一気に畳みかけます。心が動かされました。第三に僕はこの曲が大好きなんです。

15 ユリア・トゥルッキラ&マティアス・ヴェルスルイス(フィンランド)
2018-2019シーズン FD"ピアノ協奏曲第20番"


1シーズンで2プロがランクインです。僕の好みをよく分かっていらっしゃる。バラの柄の付いた衣装をまとう女性は、バラ園に佇む亜麻色の髪の乙女か、絵画の中の美女か、はたまた春を告げる女神か。いろいろ想像しましたが全部外れでした。インタビューで何について演じているか語っていました。彼らは、花に対して恋に落ちるハチドリを演じているそうです。男性の衣装の緑はハチドリの色だったのです。断じて草ではありません。コレオスピンの出でふんわりと女性を持ち上げるのが素敵です。風に吹かれた花弁がはためくように見えます。スケーティングスキルが発展途上でもまとまりがあるように見えるのは、女性の姿勢やポイントとなる振付時のフリーレッグがきれいに伸びているからだと思います。幼少期からバレエスクールに通っていたのが大きいのかもしれません。クラシック曲がほとんど使われなくなってしまった今、嬉しい選曲でもありました。

14 ミハル・ブレジナ(チェコ)
2016-2017シーズン LP"ワンス・アポン・ア・タイム リミックス"


30個選んだプログラムの中で、僕が普段なら毛嫌いするタイプの路線です。なぜなら4分半で6曲も使用しているからです。こういったプログラムは、往々にして表現が自己完結してしまって、何を演じているのかさっぱり伝わってきません。同じ作曲家の楽曲を使用しているといえど、別々の映画からの曲を組み合わせていますしね。ところがミハルは演じ切れているんですよ。音楽に合わせてしっかりと滑りの強弱を付けています。序盤は重厚な滑りで、カーブを描きながらリンクに存在感をアピールしていきます。その後は細かいフットワークを見せ、徐々に演技の男っぽさが増していきます。憂愁を込めつつも、それを振り切るようにターンからの3Aを着氷し、決闘の舞台へと立つ。そしてハッピーエンドですよ。このプログラムを全肯定できます。ストーリーなんていちいち説明されなくても、想像できてしまいます。

13 ウェンジン・スイ&ツォン・ハン(中国)
2018-2019シーズン LP"Rain, In Your Black Eyes"


僕は過去3シーズンのプログラムはSPの方が好きだったんです。LPは王者感狙いすぎな感じがして、あんまりだったんですよね。特に2017-2018シーズンLP"トゥーランドット"はやりすぎだったと思います。2018-2019シーズンはGPSを欠場し、中国の国内大会で復帰しましたが、LPは滑ることなく、練習映像だけがネットにアップロードされていました。エレメンツを抜いた状態での滑りだったのですが、その時点で僕は惚れ込んでしまいました。冒頭のダンスリフトからして異質です。ゆっくりと手足を伸ばす振付は多く見られるものではありませんから。スローフリップからの後半の盛り上げ方はヤバいですね。コレオシークエンスは、アイスダンスのコレオステップぐらいのボリューム感があります。そこから猛スピードのポジションチェンジでリフトを2つ。身長差が30cmあるジュニアペアのようにグルングルン回していくのが気持ちいい。世界選手権での演技は、2018-2019シーズンの全選手全演技中ベストパフォーマンスでした。あれを現地観戦できた方は幸せものだと思います。女性はこの曲が嫌いなので、ネオクラもういいよマンと化した僕としては、もうこういった曲滑らない希望が持てました。だってこれが最高到達地点だから、別の路線で最高のものを見せてくれる方が嬉しいですもの。史上最高のペアになってください。

12 カリーナ・マンタ&ジョセフ・ジョンソン(アメリカ)
2018-2019シーズン FD"Sweet Dreams"


女性の髪形がアニー・レノックス風味で、見た目からして入りきっています。トランジションでのムーブメントの入れ方、反復の仕方が昔のアイスダンスっぽいです。さすがはクリストファー・ディーンという仕事ぶりです。体をペシャンコになるまで反らせて両膝をついて回転するコレオスライディングがたまりません。ズサーソムリエの僕から格付けAAA認定を出します。彼ら以外でAAAが出るのは、ポポモズの今シーズンの初期のコレオスライディングだけです。コレオステップでのヴォーギングもたまりません。独自の魅力を出して大成功しました。「俯かずに前に進め!」という歌詞に合わせてのローテーショナルリフトは、迷っているすべての人に対して、さらには彼ら自身へのメッセージのように感じます。現役の最後に素晴らしい作品を見せてくれました。

11 エミー・ペルトネン(フィンランド)
2018-2019シーズン LP"SAYURI"


冒頭ジャンプが4本続きます。"まだ日の出た花街を歩いていると、一片の桜の花弁が疏水に落ちた。それを追いかけていったけれど、多くの花弁が堰に折り重なって滞留している。自分もこんな風に一生この街から出ることはできないのだろうか。誰とも視線を合わせず、伏し目がちな少女は幼心にそう思うのであった"という描写を想像できなくもない雰囲気を醸し出しています。妄想力を刺激してくれます。実際にそういった感じのシーンはありますが、こんな具体的なものではありません。少女から大人への成長は、スローパートに入って表現に艶めかしさが加わったところで理解できます。ステップシークエンス中の加速が素晴らしいです。体の残し方なんかも、本当に艶っぽいんですよ。すべての男たちの視線を釘付けにします。柔軟性がある方ではありませんが、曲に合わせたドラマティックなレイバックイナバウアーからイーグル、そしてレイバックスピンで魅せてくれます。さいたまの世界選手権でこれを滑れなかったのが残念です。日本人選手が滑る日本のプログラムよりもしっくりきました。

10 アシュリー・ワグナー(アメリカ)
2017-2018シーズン LP"ラ・ラ・ランド"


2017-2018シーズンに滑る予定だったけれど、よりドラマ性のあるものを求めて"ムーラン・ルージュ"を復活させグランプリシリーズを戦いました。2017-2018シーズンには、ドラマティックなプログラムはたくさん生まれましたが、成熟した女性の表現で魅せるプログラムはほとんどなかったので、皮肉にもこちらで戦い続けた方が個性が際立っていたでしょう。たらればを言っても仕方のないことではありますが、もっと滑り込む時間があれば結果は変わっていたかもしれません。女優での成功を夢見る女性を演じるという点においては、実は"ラ・ラ・ランド"も"ムーラン・ルージュ"も同じなのですよね。イケイケだった頃のアシュリーならサティーンでよかったですが、ベテランと呼ばれる年齢になったからこそミアが似合うわけですよ。今成功を掴まないともう後がない……というリアリティーも表現を後押しします。そしてアシュリーのスケート人生と重ね合わせながら観てしまいます。アシュリーはスケートが伸びるタイプではないので、じっくりスケートを見せる部分というのは意図的に省いているのだと推測できます。すぐにターンや方向転換をするか、エッジに乗って滑るときはスパイラルやポージングで足元以外に注目が集まるように構成しています。振付をしたシェイリーンはアシュリーの長所と短所をよく理解していますね。

9 山隈太一朗(日本)
2018-2019シーズン SP"君の名前で僕を呼んで"


選曲をしたのはお母様らしいですね。母センスがすげえよ母。どんな母だよ母。映画の中から"Hallelujah Junction"と坂本龍一の"M.A.Y. in the Backyard"という曲を組み合わせています。"M.A.Y. in the Backyard"は、ジェフリー・バトルが2008-2009シーズンに滑る予定の曲だったんです。曲目を発表してから引退してしまったので、バトルファンの僕としてはずっとモヤモヤしていました。それが、映画からの曲という形で10年後に滑る選手が現れるなんて感無量。彫像のように美しいけれど、決して純粋無垢ではなく、世の中を斜に構えて見ているような知的な少年。でも、やっぱりそこには理論で解決できないような年相応の心の葛藤があって、自分をコントロールできない。高さのあるジャンプが恋する胸の高鳴りとして、前半のリンクを大きく使った滑りが平静を保とうとする様子として伝わってきます。全日本選手権のときに、カロリーナ・コストナーが滑りそうな曲に思いましたが、そのクラスのスケーターが滑ってこそ演じられる難易度の高い選曲だったと思います。それを自分のものにできていた山隈は、とんでもない芸術派のスケーターに成長するのではないかと期待せざるを得ません。

8 ナタリア・カリシェク&マクシム・スポディレフ(ポーランド)
2016-2017シーズン FD"ダーティ・ダンシング"


このプログラムに関してはあまり説明はいらないですね。観れば分かります。めっちゃダサいんです。最初から最後までずっとダサいんです。60年代と80年代のセンスのダサさが集約され、シルヴィア・ノヴァク先生の振付の古臭さ(でもテクニカルスペシャリストだから点数はちゃんと取れる)で、ダサさが極限にまで高められています。これを観ると絶対に笑顔になってしまうんです。"Time of my life"はナタリー・ペシャラ&ファビアン・ブルザのエキシビションが素敵でしたけど、あの洗練さっぷりとは対極にあって最高でした。これからもずっとダサくいてください。洗練されたら承知しません。

7 マライア・ベル(アメリカ)
2016-2018シーズン SP"シカゴ"


超絶スタイルで小悪魔ロキシーを演じました。2シーズン使ったプログラムですが、2016-2017シーズンの序盤から振付は変わりました。ジャンプ前の振付が簡略化されたのでジャンプは跳びやすくなりましたが、見応えとしては振付がたくさん入っている方が上です。ステップシークエンスの最初と最後も手を加えています。変更前の方はピョンピョン跳ねる振付が多いので、無邪気さが一層際立ちます。罪を犯したロキシーが悪びれることなく塀の外に出て、華々しい舞台に立ち喝采を浴びる様子が伝わってきます。初期は衣装に髪飾りがあったのに外してしまってもったいない。衣装と同じでギランギランで素敵なのに。

6 パイパー・ギルス&ポール・ポワリエ(カナダ)
2017-2018シーズン FD"007"


元々最初のFDは"ペリー・メイスン"でしたが分かり辛かった。前のオリンピックシーズンは、オリンピックにこそ出られませんでしたが"ヒッチコック"という名作を世に送り出してくれましたから、その分ガックリきました。オリンピックまで2カ月の時点でプログラム変更となりましたが、なんと成功しちゃったんですね。しかも振付の大半を前のプログラムから流用したんです。それで成功しちゃったんです。不思議なもんだ。彼らは他の選手がやっていることとは絶対に違うことをするという点が優れています。ジェームス・ボンドを演じるとなれば男子はアクションで女子はセクシー。こういうのばかりですよ。彼らはそういったテンプレートになりがちな部分を避けに避けて、紫煙のくゆるウィスキーバーで駆け引きをするかのようなボンドの様子を見せてくれました。曲調が激しくなったシーンは、寝返ったボンドガールを車の助手席に乗せて追手を巻く様子に見えます。そこには何の焦りもなくて、ジェルで固められた髪は一切乱れがない。いやあ痺れましたね。フィギュアスケート界に"007"プログラムの新たな形を提案してくれました。まだまだやれることはあるぞと。それに加えて数十年前のスターみたいなルックスじゃないですか。それがまあ映えることなんの。

5 宮原知子(日本)
2018-2019シーズン SP"Song For The Little Sparrow"


シーズン中に振付を手直ししたのでいくつか変わっている部分があります。3Lz-3T着氷時の方向転換が変わったのと、全体的にですが、手を上げるタイミングがゆっくりになりました。曲との調和を重視したのだと思います。ステップシークエンス中のスパイラルはランジに変更になりました。これは、スパイラルを入れることでその直前でステップシークエンスが終わってしまったと判断されるのを防ぐためだそうです。ステップシークエンスには"表面を十分に活用しなければならない"という要件があります。きっと、スパイラルがステップシークエンスの一部としてカウントされなくても、その要件は満たすことができると思います。ただし、スパイラル以降をトランジションだと判断されると、GOEに関わってくるんです。連続ツイズルはこのプログラムの肝なので、絶対にステップシークエンスの一部として判断してもらいたいと考えた。だからランジに変更したのでしょうね。実際、僕はステップシークエンスはスパイラルの前で終わりだと思っていました。スパイラルの方がドラマティックですが、ランジにする方がリスクヘッジできるのです。1990年代のムービースターを演じるということで、レッドカーペットでフラッシュを浴びる女優としては白い衣装が華やかで似合っていました。衣装単体で見ても白い方はかなりお気に入りです。ただし、演技中ということを考えるのであればスモーキーネイビーの衣装の方がスカートや背中の布に動きがあってよかったと思います。これはもう個人の好みの話。女優は華やかなレッドカーペットに立つ裏側で、オーディションを勝ち抜き、演技力向上やスタイルキープにたゆまぬ努力を重ね、醜聞にも耐えて笑顔を作っているのです。それは女優だけでなく、フィギュアスケート選手にも言えることなのではないかと思いました。だから彼女の2016-2017シーズンの怪我からオリンピックでの復活を重ねながら観ていました。そんな意図はないのかもしれませんけどね。2015-2016シーズンのLP"ため息"が僕としては大ヒットプログラムだったので、3年スパンで僕のお気に入りを滑ってくれているということになります。だから次は2021-2022シーズンにヒット作出ますよ。

4 シャルレーヌ・ギニャール&マルコ・ファブリ(イタリア)
2018-2019シーズン FD"ラ・ラ・ランド"


"ラ・ラ・ランド"2プロ目のランクインです。こうなってくると、単に僕が曲を好きなんじゃないか疑惑が浮かびますがそんなことはありません。これは普通です。自分の昔から夢と、愛する人との幸せな将来を両天秤にかけて揺れ動く心理が、サーキュラーステップと移動距離ありすぎなシンクロナイズドツイズルで表現されています。2018-2019シーズンのように、ツイズルでの独創性がそれほど重要視されていない頃からツイズルには凝っていたので、お茶の子さいさいです。1つ目のリフトはカーブリフトからローテーショナルリフトに変更されました。このカーブリフトが地味だし浮いていしGOEも低かったので変更してくれて本当によかった。コレオステップの部分は2人の幸せな将来を取ったパターンを想像したシーン。でも、結局自分たちの夢を優先して別れ、お互いに成功を収めるわけです。4分間のフィニッシュは「これでよかったんだよね」と目線でお互いに語りかけているのです。ストレートラインリフトからコレオリフトの浮遊感がフィニッシュの切なさを際立たせます。2人がリアルカップルだから、余計に物語がダイレクトに伝わってきます。このプログラムがあったから、万年国内2番手に甘んじていた2人が、グランプリファイナルやヨーロッパ選手権の表彰台に立てました。ララランダーの皆様は、これから常にギニャファブと比較され続けるのです。これには並大抵のプログラムでは敵いません。

3 ライラ・フィアー&ルイス・ギブソン(イギリス)
2018-2019シーズン FD"ディスコメドレー"


2018-2019シーズンの第1位はこちらです。秋の時点で確定していました。こういったプログラムが1シーズンに1つは欲しい。そう思わせてくれる最高のディスコメドレーです。彼らもシーズン中に振付に手を加えました。コレオステップはもっと男女の距離が空いていましたが、男女のコンタクトと交差を増やして、ダンスっぽさを強調しました。だからシーズン序盤とは男女の踊る位置が逆になっている部分があります。このコレオステップで驚かされるのは「え?男性こんなに踊れるんすか?」というところですよね。失礼ながらめちゃくちゃ踊れなそうなのに体がギュインギュイン躍動します。そのギャップもポイントです。ローテーショナルリフトは、直前のトランジションを変更しました。また、回転中のポジションはキャッチフットから足を伸ばすようになりました。回転から上下させる振付がポイントです。これは絶対に盛り上がります。手拍子せざるを得ないでしょう。競技会では手拍子しないマンの僕でも手拍子したいです。カーブリフトは入る位置が逆になりました。変更前はジャッジ席側から、変更後は客席側からです。ここでちょうどスローパートに入るので、変更後の軌道の方が滑らかに見えます。シーズン中に、アイスダンス的にどうした方が美しく見えるかというのを的確に分析できていますね。エネルギッシュだったけどラフでもあった演技が洗練されました。中堅カップルでは難しいワンフットステップもリンクの外周を縫うように進んで曲の疾走感と相まってかっこいいし、コレオツイズルでまたギュインギュイン踊るし、コレオスライディングでキャーキャー言われるし。テンションが上がらないパートがないんです。アイスダンスではプログラムの出来不出来が順位に及ぼす影響が大きいです。満塁ホームランを飛ばしたからこそ、ごぼう抜きができました。これは2019-2020シーズンの選曲難しいぞー。女性の衣装は初期の地味なものが似合っていたかなと。水色のキラキラ衣装はプリキュアに見えます。

2 アダム・リッポン(アメリカ)
2016-2018シーズン LP"O"


最初は2015-2016シーズンのエキシビションでした。2017-2018シーズンのLPに使用する考えがあったそうですが、2016-2017シーズンで競技用プログラムとして採用し、翌2017-2018シーズンも持ち越しました。2016年に読んだインタビューでは「オリンピックシーズンにはもっといいプログラムを用意できる自信がある」と語っていたのですけどね。エキシビションとして初披露したときから、その完成度には圧倒されました。プログラムのストーリーは「群れのリーダーの鳥が羽を怪我してしまった。しかし力を再び取り戻し、勝利のために自由に飛び回る」というものです。2016-2017シーズンと2017-2018シーズンの振付が丸っきり違うのは、2016-2017シーズン中に骨折をして、そこから復活するというのを重ねたからだと思います。だから、新振付の方は鳥要素がかなり薄くなっているというか、全然怪我してないっぽいというか、徹頭徹尾リッポンがリッポンを演じているように見えました。だから僕が好きなのは、設定したストーリーに忠実な2016-2017シーズンバージョンです。音楽が進むにつれて徐々に腕の動きが増え、生命力溢れる表現を見せてくれました。振付変更後はコレオシークエンスからスピン2つのフィニッシュになってしまって、コンセプトがぼやけていました。リンクという大空を縦横無尽に飛び回り、高速のコンビネーションスピン1つでフィニッシュという流れの方が好きです。アシュリーの"ラ・ラ・ランド"のようにスケート人生が重なって、いい作用を生み出すものもありますが、やりすぎは禁物なのです。

1 樋口新葉(日本)
2017-2019シーズン LP"007"


受賞しても特に栄えない第1位は新葉ボンドでした。"007"のプログラムがトップ10に2つも入りましたが、映画や曲が好きなわけではありません。2016-2017シーズンLP"シェヘラザード"で女性らしい表現を身に付けたので、てっきり最初は「オリンピックシーズンにベタなやつパターンねーーーセクシーなボンドガールねーーー」と思って箱を開けたらあらビックリ。女性版ジェームス・ボンドを演じているではありませんか。猛スピードから冒頭の3S(もしくは2A)の幅の迫力よ。拳銃構えなくても、彼女のジャンプと爆走スケーティングが弾丸ですね。シリアスな"Skyfall"へと音楽が切り替わり、緊張から解き放たれるように3Lz-3Tを射出します。最後のジャンプが踏み切りに課題のある3Fというのがいい味出してます。不可能と思われるような仕事をやり遂げるボンドの姿ここにありですよ。ステップシークエンスのロッカーカウンター連続ツイズルの滑り出しがかっこいいです。彼女は右足でのツイズルが得意なようなので、アイスダンサー並みのぶっ壊れた移動距離を叩き出せるのですね。険しい表情でのニースライド、そしてダイナミックなファンスパイラル、軸の乱れないレイバックスピンでクールにプログラムをまとめます。今まで女子シングルの選手が演じる"007"でここまで魅せられたことはありませんでした。衣装としてはブルーのドレスが素敵なのですが、ボンドになるのであればブラックの方が似合っていますね。新調してよかったです。

選出と執筆に3週間かかりました。

カテゴリー 男子4:女子8:ペア5:アイスダンス13
シーズン(続行したものは1シーズン目のプログラム扱い) 2016-2017 9:2017-2018 11:2018-2019 10
所属国 アメリカ8:カナダ7:フィンランド・日本3:ロシア2:中国・チェコ・フランス・イギリス・イタリア・韓国・ポーランド1

僕のベストプログラム選出理由はざっくりこの4種類に分類できます。
1.現状の打破
2.革新性
3.選手のバックグラウンドとドラマ性
4.曲が好き

これらに該当する数が多いと上のランクになります。

自分でもこんなに男子のプログラムが候補に上がらないかな?と思って、過去3シーズンのプログラムの一覧を目にしていったわけですが、ほとんど出てこなかったです。「4回転ジャンプがあるからトランジションや表現はしょうがないよね……」が、知らず知らずのうちにめちゃくちゃ効いていたんだと思います。

意外にも、保守的な選曲傾向の強かった2017-2018シーズンから最多11個がランクインしました。でもオリンピックで観られたのはウィバポジェのSDとパイポーのFDだけですし、ヴァネシプやリッポンは持ち越しでした。持ち越しプログラムを使うのは戦略だから文句はありません。が、前シーズンの印象を超えることは極稀なので、2017-2018シーズンはプログラムではなくパフォーマンスそのものを楽しむことにシフトしていました。2018-2019シーズンはおもしろいプログラムが増えたので嬉しかったです。2019-2020シーズンは僕が4年間で最も好きな中間年です。めっちゃ攻めてほしいです。

歴代のベストプログラム
2015-2016シーズン 宮原知子 LP"ため息"
2014-2015シーズン ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン FD"ピアノ協奏曲第23番"
2013-2014シーズン 町田樹 EX"白夜行"
2012-2013シーズン ネッリ・ジガンシナ&アレキサンダー・ガジ EX"Dance My Esmeralda"
2011-2012シーズン ジェレミー・アボット SP"素敵なあなた"
2010-2011シーズン シニード・カー&ジョン・カー FD"交響曲第3部あがない"
2009-2010シーズン チン・パン&ジャン・トン LP"見果てぬ夢"

過去のベストプログラムへのリンク
2015-2016シーズン
2014-2015シーズン
2013-2014シーズン
2012-2013シーズン
2011-2012シーズン
2010-2011シーズン
2009-2010シーズン
若い頃の自分のノリがヤバい。
2016
07.31

2015-2016シーズン パトリック・チャン

パトリック・チャン

スケートカナダ 優勝
エリック・ボンパール杯 5位
グランプリファイナル 4位
カナダ選手権 優勝
四大陸選手権 優勝
世界選手権 5位

SP:Mack the knife
LP:ショパンメドレー
EX:Mess is mine
EX:ビートルズメドレー

初代衣装は、クリスマスの朝に新聞を読みながら「プレゼントを開けていいよ」と2人の子供たちに微笑みかけるお父さん衣装。2代目の衣装は巨乳数学教師。大きく変わったわけではないので大して突っ込むところではないのですが、僕は初代衣装の方がプログラムに合っていたと思うんですよね。マックという殺し屋の噂話をする人々の歌らしいので、クリスマスの朝のお父さんの方が庶民感が出ます。わちゃわちゃと駆け出して、エグインサイドエッジに乗って方向転換。あっという間にトップスピードに乗って4T-3Tを跳びます。そしてアウトからインにチェンジエッジしてただ滑るだけ。滑るだけなのにこの迫力。全く位置がブレないつま先まで伸びたフリーレッグも相まって芸術的。トランジションのツイズルの後に肩をワナワナ震わせるのは、殺し屋マックの恐ろしさによるものでしょう。3Aに向かうところでは左足インでのクロスロール。みんなやることなのに、こんなにながーーーくふかーーーくされると、別のものに見えます。ステップに入っていきなりの難しいターン。ブラケット~カウンター~ダブルツイズルのところ。カウンターがグイーーーンと加速するのがすごい。普通の選手ってターンでこんなに進めます?6秒でリンクの半分まで到達するってすごすぎません?膝をスライドさせて立ち上がるときにはもうエッジを倒して次の動きに入ります。隙がありません。プログラム全体にホップを多用しているのにも関わらず、きちんと滑ってもいる。シンプルな動きの質が卓越しています。江戸前の1貫ウン千円するような握りがポンポン出てくるような感じです。職人芸です。

SPは4Tの助走のところにピョコンとジャンプを1つ入れたのと、キャメルスピンがシーズン最初と最後で変わっていました。LPは2本目の4Tの助走が少し変わったのと、キャメルスピンがやはり変わっていました。でもほとんど手を加えていません。冒頭の4T-3Tの後の左手の振りと一緒に滑っていくところ、この柔らかさがたまりません。昔のPさんならこの振りが手旗信号になっていたと思うんですよね。本当に変わったと感じます。前半の3つの難しいジャンプを終えて、すぐにステップに入ります。ステップが進むに伴い、革命のエチュードの旋律も激しくなってきますが、それに付随するようにPさんの滑りも強さと熱を帯びてきます。体を残してトテトテと駆けてから、ロッカー~カウンター~ダブルツイズル、左腕を下げて右腕だけ上げてのポーン。この流れの美しさよ。ここから淡々と強くなっていくかと思えば、ジトーっとしたガニマタイーグルがあり、急にストップ。そこから静かにステップをまとめます。出るところの半時計回りで胸に手を当て、時計回りで感情をフッと放つような自然な振付が素晴らしいと思います。40秒のエレメンツの中で緩急と感情表現が何度も入れ替わっていく。複雑でレベルの高い攻勢だと関心させられます。プレリュードに音楽が変わって、それまでよりもセンチメンタルな音楽表現へと移ります。ダイナミックな3Aや3Lz-2T-2Loも物憂げです。でも弱弱しいわけではありません。音符と音符の間さえも捉えて組み込んだ3Loで見せる芯の強さ、その強さは奥底に持っています。このプログラムで僕が再三申している不満な点。コレオシークエンスの移動距離が短いところ。Pさんのプログラムのコレオエレメンツが大好きで、オペラ座の怪人のコレオステップのダイナミズムや、ラ・ボエームのコレオシークエンスに込められた悲嘆。それらが爆裂スケーティングと融合するところがよかったんです。だから短いのは嫌!もっと見せろ!もしくはコンビネーションスピンとコレオシークエンスが逆でもしっくりきたかもしれない。いや、コンビネーションスピンじゃなくて全部コレオシークエンスがよかった。短いのは嫌!もっと見せろ!そんな感じなんです。4分40秒ギリギリの振付なので、これ以上は足せないですし、はあ・・・・・妄想で振付足しとこ。表現は素晴らしく、冷静と情熱、落胆から自分を奮い立たせ「俺、生きてるぜ」みたいなパワーを発してのフィニッシュはすさまじかったです。衣装は上よりもパンツが気になりまして、サイドと尻のラインみたいなやつは一体。

久しぶりにワールドの表彰台から陥落することになった演技を見ましたが、あれはジャンプの失敗で音楽から遅れておりまして、なかなか追いつけず、微妙なズレが生じたまま終わったことも印象の悪さに繋がったと思います。ショパンメドレーは、Pさんが持つ技術の高さと音楽との完璧なシンクロを楽しむものです。だからジャンプを抜きにして考えても、四大陸よりも「あああ・・・・・うーん・・・・・」という印象が強くなってしまったのでしょう。最後に、僕はファイナルの演技があまり好きではありませんでした。わざわざ別個でファイナルの結果をおさらいするエントリーまで上げました。それは、ジャンプを成功させること≠神演技だと考えているからです。ファイナルの演技は冒頭から動きが硬く、緩急が乏しかったです。前半が強調されすぎて、演技としてはいびつな印象を受けました。自分の感覚が絶対に正しいと言うつもりはありません。ただ、大勢に流されてに肯定するのは楽だけど、性格の悪い捻くれたブログを書き続けてきた僕っぽくはないなと思いました。そのファイナルでの印象を四大陸で見事にひっくり返し、今後数十年語り継がれるようなパフォーマンスを見せました。フィギュアスケーティング、その1つの形を見たような気がします。

エキシビションのビートルズも素敵で、カーニバルオンアイスで披露した演技を見て好きになりました。でも、りっぽんぽんのせいで1 2 3 4 デデデデデデデデ デデデデデデデデって入れてしまう病にかかってしまいました。罪深きりっぽんぽん。

世界選手権後に引退!?との報道があり、ヒヤヒヤさせられましたが、すぐに「続けるわー」とのコメントが出てホッとしました。4Sを習得すれば戦うことは可能です。苦手な3Aも2本入れてレベルアップしましたし、この調子で手にして欲しいです。ずっとベテランだと思っていたPさんも今シーズンには26歳になります。本当のベテランになりました。2016-2017シーズンは、エリック・ラドフォード作曲でLPを滑ることを発表しています。賭けになると思いますけど、世界チャンピオンクラスの選手にはどんどん挑戦して、表現の極地にまで到達して欲しいので、ラドフォードさんの曲がとても楽しみです。パトリック先生の次回作にご期待ください。
Comment:6
2016
07.13

2015-2016シーズン 宮原知子

宮原知子

USクラシック 優勝
スケートアメリカ 3位
NHK杯 優勝
グランプリファイナル 2位
全日本選手権 優勝
四大陸選手権 優勝
世界選手権 5位

SP:ファイアーダンス
LP:ため息
EX:Pennies from Heaven
EX:翼をください

ミス一覧
USクラシック・・・SP3Fアテンション、LP3Lz転倒アンダーローテーション
ジャパンオープン・・・オールレベル4ノーミス
スケートアメリカ・・・SP3Fアテンションアンダーローテーション、LP3Fアテンションアンダーローテーション・3Lz転倒アンダーローテーション
NHK杯・・・SP3Fアテンション、LP2Aアンダーローテーション
グランプリファイナル・・・SP3Feマーク
全日本選手権・・・SP3Fアテンション、LP2Loダウングレード
四大陸選手権・・・オールレベル4ノーミス
世界選手権・・・SP3Fアンダーローテーション
チームチャレンジカップ・・・オールレベル4ノーミス

つおい。これから分かるようにフリップのエッジをクリーンにできるかが課題ですね。フリップはエッジに気が行き過ぎるのか、回転も危ないときが多いようです。でも、2015-2016シーズンはセカンドトリプルの回転不足が1つも獲られなかったというのは成長の証です。昨シーズンは3度セカンドトリプルの回転不足がありました。この大技で失敗しないところがミスパーフェクトたる所以です。全大会で、きちんとコンボ消費しきったのも素晴らしい。

SPのファイアーダンスは新境地。これで彼女に落ちたという方も多いのではないでしょうか。初戦のUSクラシックとスケートアメリカとの間、1ヶ月程あったんですけど、この間に振付に手を加えました。まず3Lz-3Tに向かう助走のところで腕の開き方を変えて、ゆっくりと左右に開くようにしました。パッと開くよりも音楽の重みが表現できるようになりました。フライングキャメルの後に立ち止まってからピョコピョコと跳ねる振付。ここにも手が加わりました。いきなりピョコピョコしていたのを、腕を下からパーっとひまわりのように広げて、ステップの始まりを煽っていきます。この修正もよかった。ステップの終了で立ち止まってジャッジの方を向いての振付は、手を顔の横にやるものから手招きして挑発するような女性的なものに変わりました。スケートアメリカからNHK杯ではステップの途中の振付やタイミングに変化がありました。観客サイドからジャッジサイドに方向転換したときに、前はポーズをパーンととっていたのが、足を蹴り上げるようになりました。その直後にブラケットをするんですけど、ブラケットの後の姿勢をのけぞるように変えました。この1ヶ月の間には動きにバリエーションをつけてきました。8大会の演技を全て見返しましたが、変わったのはこれぐらいでしょうか。

3Lz-3Tの着氷後に右足だけで滑り、顔を伏せる振付。この表情が素晴らしいです。男の愚かさを悟るような女性らしい表情です。レイバックスピンからのトランジションと音楽とのマッチも素晴らしい。フライングキャメルの後の腕を開いてくるくるピョンピョンする振付は、2015-2016シーズンのモノマネしたい振付ランキング第1位です。ステップの前半部分のタイミングが、ほとんどの大会で狂いがなくて、いかに滑り込んでいたかが分かります。だから安定して音楽を表現できているのだなと。手で氷をさらうような振付がいくつもあって、それがまるでフラメンコで着る長いドレスのスカートのはためきを表現しているかのようでした。手で動きの流れを作って、そこに続くように体を動かす。それがスカートのように見える。すごく考えられたステップだと思いました。ツイズル~ループ~腕を開いてがに股。ステップの緊張感をほどいていくように緩やかにエレメンツを終え、指を折りながら男をそそのかす。「あたしを捕まえてみな」という具合にトップスピードに乗り3F、2Aと畳み掛けるようにジャンプを終えます。散々男を弄んだ挙句、男に頼らずとも生きていけるという強い女性像を提示したような、そんな演技でした。ディクソン、このプログラムに全身全霊を注いでパワー使い果たした説。

2015-2016シーズンベストプログラムのため息。シーズンの途中から加えた3Lz-2T-2Loの最後のタノが生きています。これが正しいタノの使い方ですよ!この控えめ加減。減塩味噌ぐらい控えめ。その後に駆け寄って行く振付は、実際に近づいていくというよりも、むしろ「大好きな人に近づきたい」という感情の表れなのではないかと思います。好きな人への思いを募らせていくかのように丁寧に、でも強さを増していくステップ。先述の駆け寄って行く振付の直後のブラケットとステップの終盤のブラケットが対になっていて、「よし話しかけるぞ」と決意する女の子のように見えました。3Fへと向かう助走で右手をバンッと出すところが、まさにそれです。コンビネーションスピンはいざ!と歩みを進めたのに、やっぱり無理だと引き返してしまう様子を逆回転で表現していると妄想しました。残念ながらコンビネーションスピンの後の顔を伏せる振付が、シーズンが進むにつれてなくなってしまったのですが、アチャーと顔を赤らめる王道少女漫画の主人公っぽくてかわいかったです。なんでなくしたんですか!おい!1番好きだったのに!フライングキャメルの後の駆け寄る振付は、全日本までが好きな人の後ろを付いて行く感じ。そして四大陸からが好きな人の正面から突っ込む感じ。でもどちらにしても結局話しかけられないまま終わってしまう。コレオシークエンスはしっかりとエッジの丁寧さを見せ付ける彼女の王道パターンです。これはスパイラルで足を下ろす瞬間まで神経を行き届かせて、ワルツジャンプでクルッと締めます。レイバックスピンはロシア女子のような脅威の軟体スピンではありませんが、しっかりと高評価を獲得しています。単なる柔軟性に限らない「やわらかさ」ってありますよね。ラインの醸し出すやわらかさ、空気のやわらかさ。そういったものが大いにプラスに働いているのでしょう。告白できなかったから諦めてしまおうかな・・・でも思い返してみると、やっぱ好きだな。そんな多くの人間が学生時代に心に宿したであろう感情を氷の上に具現化してくれました。全日本までが高校の教室、四大陸からが大学の図書館。そういった趣でした。大きく振付を変えたわけではないのに、空気が一気に変わりました。衣装のスカートのボリュームが素晴らしかったです。ピンクのひよこみたい。体が小さいので、衣装で大きく見せることは大切です。

エキシビションの動画リンクは、せっかくなのでショウマ・ウノさんの紹介してくださったスケートアメリカとTCCを貼っておきました。ティリティリしている傘を持ったペニーズフロムヘブンは、こんな洒脱なものを演じられるのかとびっくりしました。ツッバッサヲクダッサイは英語版でよかった。日本語だと笑ってしまうし、ボーカルなしだと寂しいので。腕のヒラヒラはカーテンみたいになっちゃう人多いのに、おかしくならなくてよかったです。腕の真ん中の部分の布を1番長くすればバランスとれるのか。ヒラヒラ衣装を使う少年少女のお母さんたちはマネしてみましょう。

大先生が大先生たる理由を抜群の安定感から示してくれました。ここぞというときに頼りになる、失敗しないのが宮原知子です。ワールドでは惜しくもメダルを逃しましたが、こんなこともありますわな。何か言われるような結果でも内容でも全然ありませんでしたからね。西岡さんが「新時代のミスパーフェクト」と実況でおっしゃったので、「あ、それ言っていいんだ」ということで、せきを切ったように言われるようになりました。僕も言うようになりました。そのパーフェクトっぷりが新しいシーズンも楽しみです。新しいLPのテーマが平和と愛ということで、また新たな一面を見せてくれることでしょう。ミスパーフェクトではあるけれど、女王ではない。女王というよりは姫。和服を着たお姫様。それが宮原知子大先生。
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2016
07.11

2015-2016シーズン ジェイソン・ブラウン

ジェイソン・ブラウン

オンドレイネペラトロフィー 優勝
スケートアメリカ 3位
アイスチャレンジ 2位

SP:Love Is Blindness
SP:Appassionata
LP:ピアノレッスン
EX:Canned Heat

頭おかしい1つ目のSP。シーズンオフの振り付けの映像が出た時点で、ステップの休憩や力の抜きどころのなさに驚愕し、これほど要素を詰め込んでも人間は演技をし続けられるものなのかと思いました。最初の3Aの入りは慎重に。普通のバレエジャンプをすると見せかけて、反対側に体を回して入っていくフライングシットがかっこいい。そこからリンクの左端までクロスで進んでから、フリーフットである左足をクイッとさせた、その置き方がなんともオシャレ。チョクトーで方向転換して蝶ネクタイをキュッキュッとしてからの3F-3Tもいいです。着氷後に片足で滑る振付とトゥステップが、その直前のチョクトーの雄大さと対称的で、お茶目な部分を一層観客に伝わりやすくしていると思います。チェンジキャメルの出でフリーレッグを振り子のようにして、それに続くように両腕をブンッと振る動きは、「もういっちょやったりますか」とフロアで踊る彼の様子を見せているようでした。稀代の鬼ステップは一切休むところがなくて、前半でスタミナを使っていると露骨に疲れが見えてしまう危険なものです。チョクトーからループ、その回転のまま足を踏み変えてホップ。さらにホップを入れてキック。足がプルプルしそうな前半部分。後半部分にターンがたくさん入っていて、ここは音楽に合わせるのが難しそうです。実際きっちりと合わせられていたようには見えませんでした。そういったところがプログラムを変えるに至った理由の1つにあるかもしれません。ガチムチになる前のソチシーズンの演技と比べると、エッジが深くなって、押して押して滑っているような感じは緩和されてきたと思います。それでも、クロスの音楽とのマッチングにはまだ課題がありそうで、これから改善して欲しい箇所の1つです。ステップはスケートアメリカではレベル4を獲得できましたが、+1.20の加点だったので全てのジャッジからは+2はもらえませんでした。地元でこの評価だったので、まだまだ足りないということなのでしょう。このアップテンポな選曲はブラウンとしてはかなり挑戦的なものでしたから、中間シーズンとしては正解でした。完成形を見たい気持ちはありました。

TCCで披露した新SPは、LPのしっとり路線を持ってきた反則だろ感もありつつ、こんなの滑ったら高得点出るに決まってるじゃん感もあります。いきなりスパイラルでグッと演技に引き込みます。旧SPと違い、フリーレッグを動かして魅せるのではなく、静止させ指先の動きでアピールする。そんな3A前に向かう前のリンク右端の助走。湛えた悲しみを振り払うようにフォアで突っ走り、流れのあるステップから入る3F-3Tの工夫。そして、3Lzの前にも手を広げてフォアで派手に走って行きます。前のプログラムならこのような構成は、細々としたステップから浮くと思いますが、この音楽だからこそ成立すると感じました。3Lzを着氷したときのフリーレッグと腕の角度の美しさ。これも素晴らしいです。スパイラルを多様したことにより、LPとの差別化は失われてしまいましたが、計算しつくされた構成でした。

LPはピアノレッスン。ピアノレッスンという選曲が出た時点で、まず演じるハードルが上げられます。デロションのプログラムがあるというのはもちろんなのですが、この音楽はとてもいいので、どのスケーターが滑っても大抵いいプログラムになってしまうんです。三大いいプログラムになりやすい曲はピアノレッスン、エデンの東、ラフマニノフピアノ協奏曲第2番。曲の助けが借りやすいですしね。僕の中で見る目は厳しく、合格ラインの高さが何十年も世界記録が出ない走高跳のバーのような状態に加え、怪我明け、さらにはワールドが終わって完全に気の抜けていた僕の目に飛び込んできたTCCの演技。ラインをパーンと跳び越えていきました。ジャンプ構成を落とし、後半の3Aの入りが簡単になり、、コンビネーションスピンがやや簡素になり、3Fの前のバレエジャンプがなくなっても、それでも跳び越えていきました。2Aの前の大きなファンスパイラル。これでまず引き込まれます。よく男子選手のスパイラルやスピンを賞賛する言葉に「女子選手並みの~」というものがありますが、いやいやそういうのじゃないんです。これは男子選手だからこそ美しい。身長もそうですし、たくましい筋肉があるから女子選手とは違った趣が感じられる。悲哀の中にあっても失わない芯の強さ。そのようなものさえも感じ取ることができます。緩急のついたステップではディープエッジを見せる一方で、踊りの美しさでもうっとりとさせてくれます。お客の来ない寂れた雑貨店のショーケースの中で踊る人形のような、たくさんの人の目に映りもしないけど、いつか誰かが自分を見つけてくれる日を待っている。闇の中の一筋の光を掴むような。ポエムが止まらないです。指先を見つめてからアラベスクスパイラル、ウォーレイ、3Lz、3F-3T、2Aと畳みかけるように要素をこなして絶品のコレオシークエンスへ。特別変わったことをしているわけではありませんが、ここまでの振付をまとめ上げる美しいエレメンツです。髪に触れ、後ろを気にするように入る3Lo。不安を抱えつつも前に踏み出そうとする感情表現になっていると思います。終盤に向かってゆっくりと暗雲が取り払われていくようなプログラムです。TCCの演技は2015-2016シーズンの全選手の演技の中で5本の指に入る名演だったと思います。ブラウンの演技を見られただけで、TCCを開催した意義がありました。これに4回転が加われば190点が見えてきます。

ボーヤンと昌磨の躍進で一旦はヤバいかな?と思いましたけど、プレシーズン、そしてオリンピックシーズンにメダルに絡んでくる存在に成長できるか楽しみになりました。腰の怪我がなければもっと活躍を・・・とは思いますが、また全米選手権での活躍を期待しましょう。美女ゴールドやワールド銀アシュリーよりも、USAFAのブラウンへの期待度は高いでしょう。もちろんポテンシャルがあるというのもそうですし、時代が求める存在だからというのも理由です。でも気負いすぎず、いつも笑顔のブラウンでいて欲しいです。NHK杯での日本語披露お待ちしております。去年欠場になってしまったので、絶対に絶対に絶対に来てください。THE ICEにも出ますけど、NHK杯というのが重要なのです。
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